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中国批判の「連続パンチ」、習氏にノーで結束【WSJ厳選記事】


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By James T. Areddy
2021 年 6 月 16 日 03:48 JST 更新プレビュー


 世界の主要民主主義国家は今週、相次いで異例の中国批判を展開した。「対中国」での結束へと軸足を移し、世界トップの座をもくろむ習近平国家主席の戦略に明確なノーを突きつける姿勢を鮮明にしている。

 主要7カ国(G7)、および北大西洋条約機構(NATO)加盟国は、習氏の中核政策は軍事的な安定、人権、国際貿易、世界の公衆衛生に打撃を与えるとして、2日連続で中国批判の共同声明を発表。NATOは14日、中国が突きつける「規則に基づく国際秩序への体制上の挑戦」に対抗すると表明した。

 中国外務省の趙立堅報道官は15日の定例会見で、G7声明は米国を中心とする「小規模グループ」による見当違いの見解だと一蹴。その上で「米国は非常に病んでいる。G7は米国の脈拍を検査し、薬を処方すべきだ」と断じた。

 対中批判の「ワン・ツー・パンチ」は、他国には説教させないと言い放つ習氏に対する直接的な一撃だ。これは、中国に対する不安から主要国が対中関係を独自で管理しようとするのではなく、他国と足並みをそろえて対抗する方向へとシフトしつつあることを示唆している。

 「中国の言動はリスク計算を変えた」。ジョージタウン大学のエバン・メディロス教授はこう指摘する。「極めて重大な地政学上の境界線が破られた」

 国際社会による対中批判は、中国が習氏を表舞台に押し上げる共産党創設100周年の祝賀行事を2週間後に控えたタイミングで起こった。中国にとっては、外国勢力から受けた屈辱と苦難の1世紀を乗り越え、国際貿易でトップ、経済規模で世界第2位の大国へと発展を遂げたことを国内外に印象づける、またとない機会となる。

 ブルッキングス研究所のライアン・ハス上級研究員は、G7やNATOによる対中批判だけで、中国における習氏の強力な地位が低下することはないと指摘する。主要国で習氏への批判が強まる中で、中国指導部にとっての問題は、国際社会における中国の位置づけにどの程度の価値を置くかだという。その上で、ハス氏は「(中国当局内で)われわれは正しい道筋にあるかといった問題が浮上する可能性はある」と話す。

 中国は自国に向けられた批判について、米国主導による冷戦時代の思考だと主張。同国の外交官らは、東洋が台頭する一方で、西洋は衰退しているとの持論を展開している。G7首脳会議が閉幕した数時間後、開催国である英国の中国大使館は、共同声明はゆがめられており、かつ中傷的だとして、項目ごとに逐一糾弾した。

 民主主義国家の間では、ここにきて中国に対する不満が高まっていた。イスラム系少数民族ウイグル人の拘束、香港市民の自由弾圧、強制的な貿易慣行、台湾に対する軍事的な挑発など、G7声明ではこうした懸念事項を列挙した。また新型コロナウイルスに関する透明性の欠如に対しても懸念を示したほか、囚人の扱いやネット検閲など習氏の強権支配に対しても矛先を向けた。

 中国はいずれも内政問題との立場で、中国大使館は、G7は「恣意(しい)的に中国の内政に干渉している」と反論した。

 習氏にとっては、中国に投資を提供し、雇用を創出するとともに、輸出品を購入してくれる国際社会との間で、問題は抱えたくないのが本音だ。中国南部でコロナ感染が再流行したことで、国産ワクチンを含め、中国のコロナ対応に対する信頼は損なわれている。中国はまた、来年2月に開催する北京冬季五輪のボイコットを呼びかける人権保護団体の訴えを退けるためにも、国際社会との協力を望んでいる。

 一方、共産党創設100年の祝賀行事は、習氏が目指す来年終盤の3期目入りへの序章ともなる。

 ジョー・バイデン米大統領は自身の対中政策について、同盟国と連携して中国に責任を問わせると表明しており、G7とNATO会合は自らの構想を国際舞台の場で推進する最初の機会となった。

 共同声明の文言は、参加国の同意が必要で、これには中国と大規模な貿易を行う欧州諸国も含まれる。欧州諸国は通常、名指しでの中国批判は避ける傾向にあったが、中国が欧州の政治家や企業、シンクタンクに制裁を科したことで、ここ数カ月は中国への反発を強めている。

 前出のハス氏は、中国がG7について「世界の一握りの国にすぎず、国際社会を代表した意見ではない」と反論する可能性があるとみている。

 30カ国が加盟するNATOの文書よりも、G7声明の方が中国への強硬姿勢が目立った。例えば、NATOは台湾についての言及はなかったが、G7声明では一段落を割いて、台湾海峡と周辺海域の安定を求める文言が並んだ。トロント大学のG7リサーチ・グループによると、このような共同声明で火種である台湾問題に触れたのは今回が初めてだ。

 中国政府系メディアは、新約聖書の有名なシーンを描いたレオナルド・ダビンチの作品「最後の晩餐(ばんさん)」をもじって、G7への痛烈な皮肉を展開。「最後のG7」と題したその画像では、原画のキリストの場所に、白頭ワシ(米国の国鳥)に扮(ふん)したバイデン氏が位置しており(各首脳とみられる他の登場人物も動物として登場)、テーブルの上には中国の形をした赤いケーキが置かれておいる。この画像はネット上で広く出回った。

 習氏はコロナ禍で移動が制限されるまで、自ら各地に足を運び、国有銀行による融資を提供することで、中国の影響力を拡大。またドナルド・トランプ前大統領が多国間の枠組みを軽視したことで生まれた空白を突き、国連や世界貿易機関(WTO)といった国際組織における多国間外交に対する中国のコミットメントを強調してきた。だが、調査会社チャイナ・ビタエによると、習氏は2020年初頭以降、他国首脳との対面での会談は行っていない。

 中国はこれまで、巨大市場のうまみをちらつかせることで、外国からの批判をかわしてきた。だがここにきて、中国指導部のメッセージは響かなくなりつつある。直近ではオーストラリアとの対立に象徴されるように、中国がいかにその巨大市場へのアクセスを一転して遮断しかねないことが浮き彫りになったことが一因だ。米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のシニアアドバイザー、スコット・ケネディー氏は「経済的な成功では、中国が切実に求めている賛辞を得ることはできない」と話す。

 だが政策面で、中国が外国の圧力に屈する兆しは全く出ていない。全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は先週、外国政府による中国制裁の取り組みに加担していると判断した政府や企業、個人に対して報復を認める法案を承認した。




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