猫の幸せ、人の幸せ 岩切美穂(北部報道グループ)


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written by 岩切美穂(北部報道グループ)

 猫の話を取材した。野良猫を増やさないために、避妊去勢手術をして元の場所に返す「TNR事業」だ。依頼を受けて、名護市で活動する人々を取材した。

 世界自然遺産登録に向けた希少種保護のため、猫への餌やりなどを条例で禁じた奄美大島から来た私は、沖縄の公園などで丸々と太った猫たちが餌をもらってくつろぐ姿に「沖縄の猫は幸せだなあ。のどかで、こっちの方がいい」とのんきに眺めていたのだが、話はそう単純ではなかった。

 TNRを担う人々は、捕穫かごを自費で用意したりもがく猫に引っかかれたりしながらも献身的に世話する。「捨て猫が人間を警戒せず、虐待されることもある」との話や、虐待された猫の写真に胸が痛んだ。

NTR事業の捕穫用かごを設置するにゃごねっとメンバーと警戒しながら近付く猫=1日夕、名護市

 市に寄せられる猫の苦情はふん尿被害に関するものが一番多いという。動物愛護だけで語れない地域の問題だ。自然保護の専門家は「目指すのは野良猫ゼロの社会か。猫への思いは人によって全く違うから、ゴールをどこに置くか決めるのは難しい」とつぶやいた。

 「うーん、簡単じゃない」と頭をひねりつつ記事をまとめた。掲載直前、名護のTNRに携わる別の動物愛護団体から電話が入った。記事に盛り込めなかった彼女の言葉を最後に記したい。

 「確かに猫好きな人ばかりじゃない。だから猫の数を減らして人の怒りを収め、人が幸せになることで猫も幸せにすることが目標です。責任を持てる数の猫だけを、室内で飼う。解決策はこれに尽きます」

(金武町、宜野座村、恩納村、伊江村担当)