紅いもタルト苦境、ペースト在庫400トン 県内2社、カレーや手作りキットで打開へ


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「例年より紅イモペーストの在庫が多い」と説明する御菓子御殿生産部の城間一朗さん=21日、読谷村の御菓子御殿楚辺工場

 長引く新型コロナウイルスで観光客が減少した影響を受け、沖縄観光土産の定番、紅イモを使ったタルトの売れ行きが伸び悩み、原材料となる紅イモペーストの在庫も膨れ上がっている。製造販売大手2社は、苦戦を強いられながらも従業員や生産農家を守ろうと試行錯誤し、新たな可能性を模索している。

 「元祖紅いもタルト」を主力商品とする御菓子御殿(読谷村、澤岻英樹社長)は、2020~21年の売り上げが19年と比較して約7割減少した。例年、夏休みと重なる今の時期は、繁忙期のため製造工場を週5日稼働していたが、現在は週3日に抑えている。

 原材料の紅イモペーストの在庫量も深刻だ。澤岻社長によると、社内の保管庫には現在、例年の2倍に当たる約210トンが積み上げられている。一時は社内で保管しきれず、外部に預けた時期もあったという。

 契約農家には生産量を調整したり、サトウキビなどに栽培品目を変更したりするよう協力を求めているが、サトウキビの買い取り価格は1トン当たり約2万円で、紅イモの同16万円に比べ8分の1にとどまる。今期は約6割をサトウキビに切り替えたという読谷村の紅イモ農家、山内武光さん(75)は「コロナ禍で仕方がないが、収入が全く違う。本音を言えば紅イモを作りたい」と吐露した。

 同社では土産菓子以外で収益を確保するため、1月に「紅いもカレー」を開発し、8月にはシュークリームの販売を予定するなど、県民にも楽しんでもらえる新たな商品を投入する。

 澤岻社長は、コロナ禍で厳しい状況が続く中、生産農家や同社を応援するために、昨年から企業・団体から商品の共同開発や、まとまった量の注文が入ることも増えたと明かす。「ゆいまーるの精神に救われた。今はコロナ収束後に備え、できることをしっかり取り組みたい」と述べた。

 製造販売大手ナンポー(那覇市、安里睦子社長)も、コロナ前と比較して業績は低迷し、看板商品「べにいもたると」などに使うペースト約200トンの在庫を抱えている。

 状況を打破するため、同社は8月、子ども向けの新商品「焼きたてたるとやさん」を販売する。本格的な「べにいもたると」が家庭で作れるキットで、子どもたちに菓子作りを通して創造力を育み、沖縄の食文化に触れてほしいという思いが込められている。

 安里社長は「農家や従業員を守りながら、子どもたちには楽しく学べる機会を提供したいと思い開発した」と話し、「暗いニュースが続く今こそ、誰かを思いやる商品や支援につながる仕組みづくりに尽力したい」と前を見据えた。