イリオモテヤマネコ守れるか…餌付けや無認可ガイドも<世界自然遺産 宝の森の今>4


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竹富町が導入したガイド免許制度のロゴマークを指さす自然観察ガイドの森本孝房さん。しかし西表島内にはいまだ免許を受けていないガイドもいるという=7月3日、竹富町西表島

 イリオモテヤマネコの交通事故死(ロードキル)を減らそうと、西表島(竹富町)の沿岸を通る県道には、アンダーパスと呼ばれる小さなトンネルが設置されている。ヤマネコなど動物が県道を横断して事故に遭わないようにする物で、島内の県道下123カ所に設置されている。

 だがアンダーパスは島の東部から船浦地区までの区間にしか設置されていない。船浦地区は西部と東部の中間付近だ。今年発生したヤマネコのロードキルは3件あったが、その内2件はアンダーパスのない船浦地区以西で起きた。地元からは島西部へのアンダーパスの設置を求める声も上がるが、県の担当者は「設置は検討しているが予算の確保や設置スケジュールは具体化していない」と話す。

 ヤマネコ観察に関するルールづくりも急務だとする意見もある。ヤマネコの保護などに取り組む「西表島やまねこパトロール」の高山雄介事務局長(40)は「現在は観察に規制がない。モラルのない旅行者が餌付けなどをすると生態系に影響が出かねないし、ヤマネコが人慣れして交通事故が増えるかもしれない」と指摘する。

 西表島の課題はヤマネコの保護だけではない。町などは過剰な観光客の流入による環境負荷の軽減を目指し、入域規制へ向けた取り組みを進めている。昨年は町が定める基準を満たしたガイドにのみ自然観光事業を認める免許制度「町観光案内人条例」も施行した。

 だが、島内では無認可のガイドも横行。現在も十分な知識のないガイドが、多くの観光客を連れて島内を案内することもあるという。正規に免許を受けたガイドらからは環境保全の実効性に疑問の声も上がる。

 西表の自然観察ガイド、森本孝房さん(64)は「行政は規制ありきで自然を守ろうとしている。だが西表は観光の島だ。行政も観光と自然保護を両立する取り組みを進めなければいけないのではないか」と話している。

 (西銘研志郎)