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官能評価の不安と希望 石川酒造場製造部課長・石川由美子<仕事の余白>


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石川由美子氏

 私の重要な仕事の一つに泡盛の味を利く「官能評価」がある。どのような味・香り・特徴があるのかを口に含んで評価するのである。

 このお酒の官能評価はとても難しい。甘いのか苦いのか、バニラのような甘味なのか、はちみつのような甘味なのか。強く感じるか弱く感じるか等々。分析機械になったつもりで口に含んで感じた情報を評価しなければならない。いつ飲んでも同じ評価ができることが理想である。

 2017年から18年に官能評価についてみっちり勉強する機会があり理解度は高まったが、まだまだ自信を持つことができない。商品ごとの味の違いを感じられるだろうか。自社だけでなく他社製品もきちんと評価できるだろうか。いつも不安である。不安だからこそ評価を行う場所・環境を変えてみたり、色々な商品を購入したりして自分の感覚を確かめたくなる。そして安堵(あんど)してまた不安になって、自分の実力を確かめるの繰り返しである。自分の感覚にぶれがないか自信を持って評価できる日はまだまだ先のことだろう。

 でも、人が行う官能評価は機械と違って口に含むだけで味・香り・口あたり・長所と欠点・お酒のバランスなどを一度に感じることができる。官能評価で感じた欠点・バランスを修正することでもっと美味(おい)しいお酒へと造り上げる面白さを知ってしまったからには、大変でも実力確認作業は続いていくのだろう。いつか極められる日を目指して。