
By Jared S. Hopkins, Kim Mackrael and Giovanni Legorano
2021 年 8 月 13 日 08:55 JST 更新
オーストリアやコロンビアなど多くの国が偽契約交渉に直面
新型コロナウイルスワクチンの入手経路を持つと主張する犯罪組織や個人が数十カ国の当局に接触し、違法に大型契約を取り付けようとしている。関連資料や企てを知る関係者の話で明らかになった。
関係者によると、オランダやラトビア、フランス、イスラエル、チェコ、オーストリア、アルゼンチン、コロンビア、ブラジル、カナダ、スペインなどで、国・地域などの政府に接触があったという。
一部の政府に対しては、米ファイザーと提携先の独ビオンテック、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)、英アストラゼネカのワクチンを提供する申し出があった。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が確認した違法な契約書、基本合意書の写し、さらに関係者の話で明らかになった。中には、契約書の詳細を詰めた後、その申し出が詐欺であることに気づいて交渉を中止した政府もあるという。
エマニュエル・マクロン仏大統領の報道官は、フランスはワクチンの販売業者と直接交渉せず、欧州委員会を通じて入手していると述べた。ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領官邸は、第三者の仲介業者から申し出があったが、結局ワクチンは購入しなかったと説明。交渉があったことは認めている。ラトビア当局者は、欧州委員会とワクチンメーカーが締結した契約の範囲内でワクチンを購入していると述べた。
オーストリア政府報道官によると、オーストリアの公的機関や首相官邸に個人や企業から信頼できそうな提案があったが、怪しいと判明したことから当局に報告された。コロンビア保健省のヘルマン・エスコバル氏によると、業者から提案があったが、製薬会社と提携していることを証明するよう政府が求めたところ、業者は提案を取り下げた。コロンビアは結局、メーカーと直接契約を交渉したという。一方、アルゼンチンでは、ワクチンメーカーとのみ直接契約を結んだと、政府報道官は述べている。
関係者によると、米国土安全保障省の調査官は、購入しそうな政府を探している50~75の詐欺師、企業、ブローカーを特定した。
だましおおせた例があるかは不明だが、関係者はこうした活動について、コロナワクチンの供給が限られている発展途上国で起こっていると考えられると語った。ファイザーや調査に詳しい政府当局者によると、調査を終了した国もあれば、継続中の国もある。
米移民税関捜査局は国土安全保障調査局の全米知的財産権調整センターや製薬会社との協力により、ワクチン契約関連の犯罪について十数件の調査を行っており、米国内外のワクチン契約詐欺を調査していると報道官は述べた。
国際的な警察組織であるインターポール(国際刑事警察機構)は、進行中の捜査に役立つ情報を集めるために、数日中に各国政府へ詐欺を巡るアラートを出す計画だ。報道官が明らかにした。
ワクチンメーカー各社は、現在でもワクチンは政府向けの直接販売のみで、当局者が交渉すべき仲介業者は存在しないと述べている。欧州連合(EU)加盟国の政府や地域・地方自治体は、どの業者からも直接ワクチンを購入することはできない。
ビオンテックと共同でワクチンを開発したファイザーは、45カ国の政府に対して86件の不正な申し出があったことを把握している。ファイザーのセキュリティー責任者、レブ・クビアック氏が明らかにした。同社がつかんだ不正行為の情報は法執行機関や各国政府、さらには競合のワクチンメーカーとも共有しているという。
クビアック氏は「いずれある時点で、どこかの政府がだまされるかもしれないと懸念している」とし、「最も追い込まれている国が、最も大きなリスクを抱えている」と語った。
J&Jの広報担当者は、同社ウェブサイトに掲載されている4月の発表文に言及し、同社のワクチン販売をかたる不正な動きを認識しているとした上で、同社の代理でワクチンを販売または配布する権限を持つ民間企業はないと述べた。
アストラゼネカの広報担当者は、同社製ワクチンの民間での供給、販売、配布は行われておらず、もし民間でワクチンを提供していれば、それは偽物である可能性が高いと指摘。拒否して地元の保健当局に報告すべきだと述べた。
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