コロナ病床「すでに限界」 飲み会での感染「努力むなしい」<県医師会会長、副会長インタビュー>


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インタビューに答える県医師会の安里哲好会長(右)と宮里達也副会長=3日、南風原町の県医師会館

 新型コロナウイルスに伴う緊急事態宣言が長期化する中、県は2日、経済活動の再開に向けた規制緩和の目安を発表したが、入院患者の減少傾向はまだ見えない。「まだまだ気を緩めるわけにはいかない」と語る県医師会の安里哲好会長と宮里達也副会長に、逼迫(ひっぱく)する県内医療体制の現状を聞いた。(敬称略)(聞き手・嘉陽拓也、當山幸都)
 

Q.コロナ専用病床は800床を超えている。千床まで対応可能か。

 安里 流行以前は急性期を担う21病院の6409病床で対応してきたが、常に余裕がない。その中からコロナ病床を800以上を割いてきた。通常の医療とバランスを取るために最善を尽くしているが、すでに限界だ。8月28日の病院長会議で、玉城デニー知事から100~200床の増加を求められたが、現場の限界を超える。仮に千床確保するなら、他の疾患の対応が手薄になり、別の問題が発生する。

Q.災害時などに発動する事業継続計画(BCP)について、今回のような感染症の流行で発動したことはあったか。

 安里 県内でこのような大規模な感染症の経験はない。BCP発動も大規模食中毒があった病棟で経験はあるが、感染症での発動はなかった。

 手術件数に関する調査では、14医療機関から回答があったが、2019年と21年の約半年間を比較すると、全身麻酔で行われる手術は約2300件減り、通常医療に相当のしわ寄せが来ている。医師も自分の存在意義を考えるだろう。

Q.医師や看護師など人手が不足している。

 安里 発熱外来やワクチン接種業務、宿泊療養施設、入院待機ステーションなど、仕事が増えて医師の確保が難しくなっている。看護協会も確保に尽力してるが、看護や医療行為など技術の課題もある。

Q.飲み会などで感染して入院する患者に、医療従事者から不満もある。

 安里 医療者が自らの努力がむなしく感じるとの訴えを聞いている。

 宮里 医局の現場からそのような話は聞こえる。昨年は医療者も重症化する事例もあって離職者が増えたが、今はワクチン接種も進んで離職は減ってきた。

Q.県は感染者の減少に応じ、経済を再開するため規制緩和の目安を示した。

 宮里 1日の感染者が前日比3割減のペースより大きく減ってほしい。1日100人未満であれば、各病院は一般診療も逼迫せずに対応できる。

 安里 県は具体的な施策をしっかりやってほしい。夜の街を10日間程度活動停止すれば感染者は下がる。そういうのを思い切ってやっていただきたい。

Q.県民にメッセージを。

 安里 県民全体でワクチン接種率をさらに加速してほしい。みなで感染防止を徹底し、特に若い人たちは行動自粛をしてほしい。