「うちあたい」しながら考え、気づいた…「女性力」報道<取材ノート・新聞週間2021>


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取材を通して、さまざまな気付きがあった「女性力」の連載

 1月から約半年間続いたキャンペーン報道「『女性力』の現実 政治と行政の今」の取材で、県内の8割の自治体が職員採用時の資料で、男女二択式の性別欄を使っていることを報じた。当初、単純に「性別欄自体を廃止すべきだ」と考えていた。だが取材を進めるうちに、そう簡単な話ではないと気が付いた。

 性別欄を無くすべきだと考えたのは、就職試験で性別の記入を強制されることが負担になる人たちがいるためだ。琉球大法科大学院の矢野恵美教授(ジェンダー法)に話を聞いた。男女二択式は廃止すべきという意見は一致した。

 ただ「性別欄そのものを無くすと、男女格差が見えなくなる問題がある」と言われた。差別を可視化する統計が必要だという考えだ。(1)自認する性別(なし、どちらでもないなどを含む)でいい(2)統計のみに使う(3)記載しなくてもいい―の明記を説いた。

 「『女性力』の現実」の取材では、このような気付きや学びの連続だった。“うちあたい”(自分自身思い当たること)することも多い。担当した行政編では、性別役割分業や家事・育児の男女不平等、職場の長時間労働が悪循環となっている現状が分かった。結果的に男性優位の格差がつくられている。自分自身、働き方で不平等社会に加担していたと反省した。

 県庁で総務や企画に関する部署に男性が多く、福祉関連の部署に女性が多く配置されていることも報道した。職員対象の匿名アンケートでは30代男性から「総括や企画する能力が男性の方が高い」との声が寄せられた。能力に性別は関係ない。同世代でも偏見に基づく意見があることに、問題の根深さを感じた。

 紙面に掲載される人の割合も男性に偏っている。今回のキャンペーン報道に携わるまでは不自然だと気付いていなかった。しかし社会の半分、また読者の半分は女性だ。多様な視点や意見を伝えるためにも、ジェンダー均衡を考える必要がある。

 最近は、紙面展開を決めるデスク陣から取材対象の女性割合を増やすよう指示があるなど、社内の雰囲気も少しずつだが変わってきた。記者一人一人が意識や行動を改めていきたい。

 (明真南斗)