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中国「ゼロコロナ」戦略の功罪、市民疲れ色濃く 【WSJ厳選記事】


アジア・オセアニア

「いつまで耐えられるか」という悲痛な声も

By Liyan Qi and Natasha Khan
2021 年 11 月 5 日 09:36 JST 更新

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 中国はここ1年余り、国境沿いの街に相次ぎ厳格なロックダウン(都市封鎖)を導入してきた。地元住民は国外からの感染流入を防ぐため、まさに「歩兵」としてコロナとの闘いで最前線に立たされている。

 ミャンマーとの国境沿いにある宝石取引拠点の雲南省瑞麗市。地元の母親らは投稿で、幼い自分の子どもは定期的に受けるコロナ検査に「まひ」しつつあると嘆いている。2歳児ですでに検査を100回も受けたと話す母親もいる。検査で次々と陰性結果が出ても、数カ月連続で隔離を強制されたとの投稿もあった。一部の飲食店は半年以上、休業に追い込まれたままだ。

 中国では変異株「デルタ株」により、2020年初頭に初めて武漢市を封鎖して以来、最大規模の感染拡大に見舞われており、全国的に新たなロックダウンや厳しい規制が敷かれている。さらに多くの省で感染が広がっているが、全体では1日当たりの新規感染者数が100人未満にとどまる。

 公衆衛生の専門家は2022年もほぼ年間を通して制限措置が続くとの考えを示唆しており、中国が掲げる「ゼロコロナ」戦略への疲れを指摘する声が各地で目立ってきた。

 10月31日には、上海ディズニーランドで数万人が閉じ込められた。入場客1人が検査で陽性反応が出たことが発端で、残る全員が待機を命じられ、足止めに遭った。花火が上がる中、園内には検査を受ける長い列ができた。

 首都・北京では、共産党幹部300人余りが集まる重要イベントを来週に控え、ウイルス封じ込めに向けた「厳戒態勢」が敷かれている。10月28日には、上海―北京間の高速鉄道に乗っていた数百人が車両から退避させられ、隔離施設へと送られた。乗務員1人が濃厚接触者に特定されたためだ。

 北京の学校2校は今月1日、各校の教師1人と生徒1人がそれぞれ検査で陽性結果となったことで閉鎖された。ネットに出回った動画によると、そのうち1校の校長は、生徒らは検査結果を待つ間、校内で一夜を過ごすことになるとして、親に枕と毛布を届けるよう指示。その後2週間の隔離には、生徒1人につき親1人が同伴できると説明している。

 また陽性反応が出たその教師と同じワクチン接種会場でブースター接種(追加接種)を受けていた学校職員が勤務する別の数十校もドミノ連鎖で閉鎖に追い込まれた。

 北京住民の中には、追跡アプリで感染者が出た場所に居合わせたことが判明し、当局が一元管理する隔離施設に送られたか、ドアの外にセンサーが設置された状態で自宅待機を命じられたと話す者もいる。たとえ、それが数分の滞在であってもだ。

 中国商務省は1日、冬場を控え、家庭や業者に対して必要品を確保しておくよう指示。さらなるロックダウンに住民を備えさせるための措置だと広く受け止められた。ただ、同省はその後、発表について考えすぎないよう市民に促している。

 中国は2年近く前に武漢の封鎖を決めて以降、引き続きロックダウンに加え、大量検査や強制隔離を徹底して実施している。厳しい規制を敷いていたオーストラリアやシンガポールといった国々が緩和方向へとかじを切った後でも、中国は変えていない。

 データをみる限り、中国は他の国・地域に比べて、驚くほど封じ込めに成功している。米ジョンズ・ホプキンス大学によると、累計の感染者数は11万人、死者は5000人未満だ。これに対し、米国は感染者が4600万人余り、死者は75万人近くに上っている。

 習近平国家主席は2020年1月以降、中国を出ておらず、20カ国・地域(G20)といった国際会議にもネット経由で参加するなど、バーチャル外交に徹している。

 ミシガン州立大学の社会学者、スーフェイ・レン氏は、中国は世界で最も厳しいと言える封じ込め対策を講じていると話す。中国のような地方と中央政府の双方が市民を徹底監視する仕組みは、危機時には極めて有効だとし、これは市民が比較的従順に規制を順守していることからも見て取れるという。

 だが、自身も中国にいる父親に2年会えていないというレン氏は、厳格な国境封鎖による人間への影響をあなどるべきではないと指摘する。「中国が扉を閉ざしていることで、人と人の交流が断絶されており、その喪失感は計り知れない」

 中国は来年2月の冬季五輪に続き、秋には習氏が3期目続投を目指すとされる第20回共産党大会といった大型イベントを控えており、近く規制が緩和される兆しは全くみえない。

 中国の呼吸器疾患の専門家、鐘南山氏は、感染拡大が発生するたびに封鎖の導入と解除を繰り返すよりは、ゼロコロナ戦略の方が代償が少なくて済むとして、適切だとの考えを示している。

 同氏は今週、中国国営中央テレビ系列の国際放送、中国国際テレビ(CGTN)とのインタビューで、一部の国は感染者がなおいくらが出ているのに全面解除を決定し、その後すぐに規制強化の再導入を余儀なくされていると指摘した。「この二転三転のアプローチの方が実はコストがかかる。市民や社会に与える心理的な影響も大きい」

 同氏はその上で、中国が2022年上期には集団免疫に達すると予想しているとしながらも、中国人の海外渡航は来年末までに正常化する可能性は低いとの見方を示した。

 在中国欧州連合(EU)商工会議所のヨルグ・ワトケ会頭は、中国のコロナ対策により、外国企業は将来の計画を策定するのが一段と困難になっていると話す。

 ワトケ氏は「隔離が長いほど、中国への影響も大きくなる――とりわけ、ハイテク業界はそうだ」と指摘。実質3週間の隔離措置など、中国と簡単に行き来できないことで、専門家やビジネスマンの間で中国への渡航を避ける動きが広がっていると述べる。

 瑞麗市の当局者らは、昨年9月以降、4回実施しているロックダウンやその他の封じ込め対策は、ミャンマーからのウイルス侵入を阻止する手だてだと話している。

 雲南省保健委員会のデータによると、瑞麗市の市中感染者は年初来、おそよ300人にとどまるが、ミャンマーを中心に外国からの帰国者による感染が7月以降、700人余りに上っている。

 中国版ツイッターの「微博(ウェイボー)」では先週、ある大学生が瑞麗市当局が国境沿いの宝石取引市場を閉鎖したことで両親が仕事を失ったと投稿していた。「収入も何の補助もない中で、両親はなお弟の学費を支払わなければならない。Rにはこのような家族が数え切れないほどいる」。この投稿には12万以上の「いいね」の反応があった。Rとしているのは、瑞麗市の規制に絡む投稿に対する当局の検閲を逃れるためだとみられている。

 瑞麗市のある住民は、検査ですべて陰性反応だったにもかかわらず、21日間たっても仮設隔離施設から出られないと不満を漏らしていた。半年も隔離施設に閉じ込められ、残る半年は恐怖と絶望の中で生きているという住民もいる。その男性は過去1年に100回近く検査を受けたと言い、こう述べた。「いつまで耐えられるだろうか」
 




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