【記者解説】沖縄観光「薄利多売」からの転換 指標を「人泊数」に変える狙いと課題は


社会
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首里城公園を訪れる観光客ら=2021年11月(資料写真)

 2022年度からの10年間の沖縄観光の方向性を決める「第6次県観光振興基本計画」を議論する県観光審議会で、県は、沖縄観光の重要指標としていた入域観光客数を人泊数(延べ宿泊者数)に変更する方針を示した。1人当たりの滞在日数や消費単価を高めて「質の向上」を図る。

 11年度に第5次基本計画を策定した時の入域観光客数は500万人台で、その後ホテル開発や外国客の誘致が急激に進み、18年度には入域観光客数が1千万人の大台を突破した。

 急成長を遂げた一方、競争の激化によって観光事業者の収益向上には必ずしもつながっていない。

 入域観光客数が同規模のハワイと平均滞在日数を比較すると、17年1~12月で沖縄は3・68日、ハワイは8・94日とかけ離れており、観光収入も倍以上の差がある。

 新型コロナウイルス感染症が収束して観光需要が回復しても、「薄利多売」の状況を変えなくては、オーバーツーリズムに陥らずに観光収入の増加を達成するのは難しい。質重視への転換は急務と言える。

 一方で数値目標には実現性の面で疑問も残る。審議会で県は、「平均滞在日数を2日延ばす」と目標を提案したが、10年度以降、滞在日数は3・6~3・9日で推移しており、ハードルは高い。

 審議会では31年度の目標について、宿泊施設のキャパシティーなどから現実的ではないという指摘が出た。今後はより具体的な計画策定が求められる。

 (中村優希)