【深掘り】岸田政権で「沖縄振興」「辺野古」どうなる? 脱「官邸主導」の影響は…


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(左)沖縄担当相再任が決まり、首相官邸に入る西銘恒三郎氏=10日午後4時35分 (右)記者団の取材に応じる玉城デニー知事=10日午後5時半すぎ、県庁

 第2次岸田内閣が発足した。自民党は衆院選沖縄選挙区で議席を奪還し、玉城デニー知事を支える「オール沖縄」勢力に2対2として足場固めに成功した。岸田文雄首相は米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を引き続き進める考えで、建設に反対する玉城県政との隔たりは続く。一方、沖縄振興は本年度で期限が切れる沖縄振興特別措置法に替わる新法制の制定作業も今後、大詰めを迎える。美ら島議員連盟会長も務める岸田首相は、沖縄政策を主導してきた菅義偉前首相が官邸を去った後も、前政権からの既定路線で沖縄振興の議論を進める見通しだ。

小渕氏は留任

 自民党の沖縄振興策を協議する振興調査会の人事は来年、日本復帰50年の節目を迎える沖縄の新たな振興策の「たたき台」となる提言取りまとめを主導した小渕優子会長が留任する見込みだ。与党と政府が一体で進める狙いがある。

 同会幹事長として党提言の策定に関わった西銘恒三郎氏は沖縄担当相に就任したため、党の役職をこなすことが難しくなっていた。

 関係者によると、西銘氏が務めていた幹事長に橘慶一郎衆院議員が就任し、橘氏が務めた事務局長のポストに宮崎政久衆院議員が就く方向で最終調整している。

 党関係者は「小渕氏の会長留任で、政府と与党が連携して作り上げた流れを踏襲する方向性が鮮明になった」との見方を示した。

 一方、県関係者は、岸田政権の本格始動によって安倍晋三・菅政権で続いた官邸主導政治は弱まるとの見方を示したものの、沖縄にとって吉と出るか凶と出るかは「判断が付かない」と慎重にみる。

いまだ届かぬ声

 沖縄関係予算は、内閣府の概算要求で10年ぶりに3千億円台を割り込む2998億円を示し、波紋を呼んだ。岸田首相は「聞く力」をアピールし、官邸主導からの転換姿勢を示すが、「現政権が前例を覆すような手法を取るとは考えにくく、最終的な予算もサプライズは起こりにくい」(自民関係者)との声が上がる。

 玉城知事は6日に松野博一官房長官と面談した際、沖縄振興についての県の要望を反映させるため、官房長官以下主要閣僚と知事が出席する「沖縄政策協議会」と同様の協議体設置を要望した。だが10日現在、「まだこれという回答は寄せられていない」(玉城知事)。

 玉城知事は記者団に「われわれとしては引き続き対話の場を設けていただきたい。岸田総理にも私からじかに現状を伝え、考え方を伝えさせていただければ」と訴えた。県と国、双方の溝は埋まらぬまま、引き続き国主導で沖縄振興の議論が進む。

(池田哲平、安里洋輔、梅田正覚)