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エアポッズはもう古い?有線イヤホンが復活【WSJ厳選記事】


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レトロなコード付きイヤホンが再び流行、その美的・哲学的なクオリティーとは



By Rory Satran
2021 年 11 月 16 日 16:10 JST 更新プレビュー



 最近は誰もが「AirPods(エアポッズ)」を着けているようだ。2016年、米アップルがBluetooth(ブルートゥース)対応のこのイヤホンを発売して以来、エアポッズは日常生活になくてはならない存在になった。無数の人々が、この2つの小さな軸を耳から突き出したまま、歩き回ったり、話したり、走ったり、仕事をしたりしている。こうした人々は、今まさに、先月発売された「空間オーディオ」対応の第3世代エアポッズへの買い替えを検討しているのではないだろうか?「空間オーディオ」とは何か?筆者もよくわかっていないが、その響きがエキサイティングだ。エアポッズの普及は、アップルのウエアラブル事業にとって重要なものとなり、2021年9月期の売上高は383億ドル(約4兆3700億円)だった。

 つまり、エアポッズは普及しすぎて、もはや「クール」なものではなくなっている。そこで、おそらく必然的な流れとして、天邪鬼なトレンドセッターたちが有線ヘッドホンという古いテクノロジーを復活させているのだ。ベラ・ハディッド、リリー・ローズ・デップ、ゾーイ・クラヴィッツなど、ファッションに敏感な若いセレブたちは、堂々と有線ヘッドホンをつけ、街を闊歩している姿を撮影されている。街中で見た有線ヘッドホンを投稿するために、@wireditgirlsというインスタグラムのアカウントが立ち上げられ、動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」ユーザーは、有線が再び流行している実用的な理由と、哲学的な理由を示す動画を撮っている。

 実用面では価格が重要だ。エアポッズシリーズは、最もベーシックな第2世代モデルが129ドル、新たに発売された第3世代モデルが179ドル、エアポッズマックスが549ドル。これに対して、アップルの有線イヤホンはわずか19ドルで、他ブランドのものはさらに安い。片付けが苦手な人には、有線ヘッドホンの方が管理しやすく、充電も不要だ。さらに、ワイヤレスイヤホンから連想される「放射線」に対して、漠然とした似非(えせ)科学的な異議を唱える人もいる。若者文化に特化したクリエイティブ・エージェンシー「デジタル・フェアリー」のカルチャー専門担当であるビズ・シャーバート氏は、有線ヘッドホンに関するティックトック動画のナレーションを担当した。彼女はこの動画のコメントを見て、「人々は、エアポッズからブルートゥースの放射線が放出されている可能性を非常に心配しているようだ」との見方を示した(ブルートゥースヘッドホンは非電離放射線を放出するが、米食品医薬品局(FDA)は現在のところ、人体には無害だと判断している)。

 また、コードは、「隣に座らないでほしい」という要素を示すものでもあり、一部の人に対してはここが訴求ポイントにもなっている。エアポッズは着けていても目立たないので、少なくとも外の世界から声をかけてもいいように見えるが、有線ヘッドホンは着けている人を他人から隔絶する。デジタル・フェアリーの戦略・ブランド担当ディレクター、ナタリア・クリスティーナ氏は、そこが魅力なのだと語る。「『邪魔しないでほしいという雰囲気』を醸し出しているため、無意識的にグランジ的な美学に結び付く。グランジスタイルには、気難しさと、そうした物理的な近づきにくさがあるものだ」

 その美学は、「2010年代のTumblr(タンブラー)」気分と呼ばれ、1990年代のグランジスタイルをパステル調にして若々しくしたようなもので、ソーシャルメディアのプラットフォーム上で拡散している。ロサンゼルスのインディーズレーベル、ロストラムレコードのマーケティングコーディネーターであり、@wireditgirlsのインスタグラム・アカウントを担当しているシェルビー・ハル氏は、「タンブラー時代への感傷と人気復活で、人々は音楽を単なる実用的な消費ではなく、全体的な美的体験として見ている」と説明。「ローファイ・テックは、より美的な体験と見なされ、クールな要素に貢献している」と述べている。

 有線ヘッドホンは、そのノスタルジックな輝きだけでなく、最適化された「ITかぶれ」の企業文化に対する自由放任な対抗心ともとらえられる。カリフォルニア州オレンジ郡のソーシャル・メディア・マネジャー、コートニー・パーク氏(25歳)は、有線ヘッドホンは「金融マンの美学」とは「正反対」なのだと指摘し、常にパタゴニアのベストを着て、エアポッズを着けているような技術系金融マンの外観を、多くの人がからかいの対象にしている」のだと説明した。パーク氏自身もエアポッズを3年間使ったが、充電ができなくなるなどの問題が起きたため、最近は使用していない。同氏によると、有線ヘッドホンには「無造作で肩の力が抜けた雰囲気がある」という。




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