オリオンvs内閣府、どうなる「ビール税軽減」 段階的引き下げめぐり攻防


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自民党沖縄振興調査会であいさつする小渕優子会長=19日、東京

 【東京】2022年度の沖縄関係税制の議論が本格化するなか、沖縄の日本復帰後50年にわたって続いた酒税軽減措置の行方に注目が集まっている。内閣府は、軽減率を段階的に引き下げ、ビールを5年後、泡盛を10年後に廃止する税制改正案を打ち出している。自民党沖縄振興調査会(小渕優子会長)も、この方針に沿う税制改正要望案を党の税制調査会(税調)に提出。一方、廃止まで5年間の軽減率は据え置きという認識を示すオリオンビール側は「段階的引き下げ」案に反発している。来年度からの税制改正に、「5年後の廃止」案を主張する業界の思惑が反映されるのか。関係者は議論の行方を注視している。

 ■インナーへ直訴

 「酒税軽減措置についてわれわれの考えを伝えに来た」。今月18日、東京・永田町の衆院議員会館にオリオンビールの嘉手苅義男会長の姿があった。

 嘉手苅氏は本紙取材に上京目的についてこう答え、「インナー」と呼ばれる税調の議論を主導する自民党重鎮議員のもとを訪ねたと明かした。関係者によると、嘉手苅氏は「インナー」の各議員のほか、茂木敏充幹事長とも面会したという。

 嘉手苅会長の意図について、ある自民党議員は、「酒税軽減措置の『段階的引き下げ』を撤回するよう求めるための要請だ」とした。翌19日には、自民党本部で党沖縄振興調査会が開かれ、税調に提出する税制改正要望案の取りまとめが行われた。前出議員は、「税制改正の議論が本格化するまでに、税調の中心メンバーに直接働き掛けたかったということだろう」とおもんぱかる。

 ■戸惑い

 焦点となっているのは、内閣府が8月の概算要求で示した税制改正案の中身だ。内閣府は日本復帰後50年続いた酒税軽減措置について、泡盛を10年後に、ビールを5年後に廃止する案を公表した。党沖縄振興調査会でも議論を重ねていた経緯もあり、この方針について内閣府内では「異論はない」との見方だった。

 しかし、ビールの措置について、現在20%となっている軽減率を5年後の26年度に廃止するまでに、23年度にいったん15%に引き下げる「段階的引き下げ」を主張。これに対して、オリオンビールは軽減率の26年度までの維持を求めるなど、「行き違い」(自民党議員)が生じる事態となっているのだ。

 オリオンビール側は「社内決裁は3月に、『20%削減の5年延長を求める』で通っていて、そこから変わりはない。なぜ内閣府案があのような形になったのか分からない」(同社関係者)と戸惑いを隠さない。

 来年度の税制改正は、自民党税調の29日の会合で党内の各部会からの要望が集約された。党内の審議を経て、12月10日前後にまとめる税制改正大綱で決定される。前出の自民議員は、「それまでに党側と業界側で合意形成が図れるかどうかだ」と議論の行方に気をもむ様子を見せた。
 (安里洋輔)