山之口貘賞に長嶺さん「Aサインバー」 選考委員「糸満の原風景に胸を打たれる」


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長嶺幸子さん

 沖縄を代表する詩人・山之口貘(1903~63年)の文学を受け継ぐ詩作品や詩活動を表彰する、第43回山之口貘賞(主催・琉球新報社、後援・山之口貘記念会、南海日日新聞社)の選考会がこのほど那覇市内で開かれ、長嶺幸子さん(71)=糸満市=の詩集「Aサインバー」(詩遊社)が受賞作に選ばれた。贈呈式は2月上旬に那覇市泉崎の琉球新報ホールで開催を予定している。 

 新型コロナウイルスの影響で2020年度の選考会は延期したため、今回は、20年度と21年度の2年間に発刊された詩集を対象とした。応募詩集は2年間で計14冊。受賞作は長嶺さんの故郷・糸満の原風景や家族の絆、地域の人々との交流などを題材とした25編を収録している。

 選考委員は、以倉紘平氏(詩人、H氏賞、現代詩人賞受賞)と高橋順子氏(詩人、読売文学賞、藤村記念歴程賞、三好達治賞受賞)、市原千佳子氏(詩人、丸山豊記念現代詩賞、山之口貘賞受賞)。受賞作について選考委員は「母と時代への鎮魂歌。抑制の利いた文体。こんな美しい記憶を謳(うた)った詩集はまたとない」(以倉氏)、「糸満の原風景、人の営みのいとおしさに胸を打たれる。心が洗われるようです」(高橋氏)、「幼少期の原体験や原風景で輝く海馬から溢(あふ)れる母の子への慈しみ。子の海馬に抱かれる幸せ」(市原氏)と評価した。
長嶺幸子さん