辺野古設計変更「不承認」 沖縄知事のコメント(概要)


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 玉城デニー知事が25日の記者会見で読み上げたコメントの概要は以下の通り。

    ◇    ◇

 普天間飛行場代替施設建設事業公有水面埋立変更承認申請の処分について
 1 経緯
 (1)昨年4月に、沖縄防衛局から提出された普天間飛行場代替施設建設事業に係る埋立地用途変更、および設計概要変更承認申請について、公有水面埋立法への適合状況を確認するため、沖縄防衛局に対して、延べ39項目452件の質問を行った。
 

 (2)沖縄県においては、沖縄防衛局の回答を踏まえ、慎重に論点の絞り込みを行い、土木および環境に関する専門家の助言を求め、公有水面埋立法への適合性について、「災害防止」および「環境保全」に十分配慮した計画となっているかなど厳正に審査してきたところであり、昨日、関係部局から審査結果の報告を受けた。

 2 審査結果について
 (1)本件埋め立て変更承認申請書については、次の事項について公有水面埋立法の基準に適合しないとした。
 ①公有水面埋立法第4条第1項第1号で規定する「国土利用上適正かつ合理的なること」の要件に適合しないと認められること。
 ②同法第4条第1項第2号で規定する「環境保全および災害防止に付き十分配慮せられたるものなること」の要件に適合しないと認められること。
 ③「埋め立ての必要性」について、合理性があるとは認められないこと。
 ④上記②~③を踏まえ、変更の内容について認められないとした。

不承認に関連した記者団の質問に応える玉城デニー知事=25日午後、県庁

 3 基準に適合しないとした事項について
 (1)「国土利用上適正かつ合理的なること」の要件について軟弱地盤が確認されたことを踏まえ、設計概要変更承認申請が行われているが、地盤の安定性等に係る設計に関して最も重要な地点において必要な調査が実施されておらず、災害防止に十分配慮した検討が実施されていないことから、「埋め立てをしようとする場所」について、合理性があると認められないとした。
 

 (2)災害防止について
 軟弱地盤の最深部が位置するB―27地点において、地盤改良を実施しても20メートルの未改良層となる粘性土Avf―c2層の性状を確認するために必要な力学的試験を実施していないため、地点周辺の性状等が適切に考慮されていない。
 さらに、施工時の地盤の安定性について、不確定性をどのように考慮したのか不明であり、合理的な説明が得られていない。
 そのようなことから、公有水面埋立法第4条第1項第2号災害防止に十分配慮された検討が実施されておらず、適合しているとは言えない。

 (3)環境保全について

 ①ジュゴンについて
 事業の実施がジュゴンに及ぼす影響について、埋め立て工事が行われ多数の船舶が航行していることからすれば、水中音調査を実施し、予測値と実測値を比較し、必要に応じて、予測の不確実性について、補正を行う等してより精度の高い予測値に基づき環境保全措置を検討することも実行可能であると考えられるが、水中音の調査は行われていない。
 また、沖縄防衛局の行う施工中の事後調査では、くい打ち工事前にジュゴンが大浦湾に来遊した際の水中音による影響や、評価基準値以下の範囲内におけるジュゴンへの影響について確認することができず、事後調査の結果と環境影響評価との比較検討が可能となっていないことなどから、事業の実施により生じ得る環境への影響を回避または軽減するために採り得る措置が的確に検討されておらず、措置を講じた場合の効果が適切に評価されていない。

 ②地盤の盛り上がりについて
 地盤改良として改良径2メートルおよび1・6メートルのサンドコンパクションパイル工法を東側護岸の約1キロメートルに約1万6千本実施することにより、海底地盤が最大約14メートルの高さまで盛り上がるが、地盤が盛り上がる箇所の調査が実施されておらず、その地盤の盛り上がりが環境に及ぼす影響について適切に情報が収集されていない。
 以上のことから、公有水面埋立法第4条第1項第2号環境保全に十分配慮された対策が取られておらず、適合しているとは言えない。

 (4)埋め立ての必要性について
 地盤の安定性などに係る設計に関して最も重要な地点において必要な調査が実施されておらず、地盤の安定性が十分に検討されていないことから、災害防止につき十分配慮されているとは言い難く、埋め立ての動機となった土地利用が可能となるまで不確実性が生じており、今般の変更申請の内容では普天間飛行場の危険性の早期除去につながらないことから、「埋め立ての動機となった土地利用が埋め立てによらなければ充足されない」ことなどについて、合理性があるとは認められない。
 (5)法第4条第1項第2号に適合していないこと、埋め立ての必要性について合理性が認められないことなどから、変更の内容について、やむ得ないと認められない。

 4 変更承認申請書の判断について
 今回の処分は、公有水面の埋め立てに関して権限と責任を有する知事として、法律による行政の原理の下、公平公正の観点から厳格な審査を行った結果であり、公有水面埋立法に基づき適正に判断した。

 埋め立て土砂に関して、今般の変更申請については、先の大戦で犠牲となられた、ご遺骨がいまだ残されている場所から採取された土砂が、基地建設のための埋め立て工事に用いられる可能性が示されており、このことは既存の法制度の枠組みを超えて国民全体の問題として受け止めないといけない。政府はこの土砂問題に関してまだ何も決まっていないと説明するだけで、明確に否定されていないが、悲惨な戦争を体験した県民、国民や遺族の思いを傷つける行為は絶対にあってはならないことだ。人道上、許されるはずもない。

 今回、変更申請が不承認となったことにより、土砂採取地の候補地として追加されていた地域からの土砂が、埋め立て工事に用いられることは認められないということになるが、県としては政府に対して、県民、国民の切なる思いを伝えないといけないと思っている。

 このように、政府が、十分な説明を行わないまま一方的に、強権的に埋め立て工事を強行する姿に、不安、憤り、悲しみを感じている、県民、国民が数多くいる。このことは今般の変更申請に関して、県内、国外から1万7839件の意見が県に届けられ、そのすべてが否定的だったことからも明らかなように、沖縄だけの問題ではない。

 辺野古埋め立て工事や今般の変更申請に関して、県民や国民にさまざまな声や思いがあることについては、県民の負託を受けた知事として真摯(しんし)に向き合い、重く受け止めている。今後もこのような声の一つ一つに耳を傾け、その思いに寄り添いながら、県民国民の強い思いに、全身全霊で応えて参る。

 あらためて、申し上げるが、今般の変更申請が不承認となった以上、沖縄防衛局は大浦湾側の工事をすることができず、結果として埋め立て工事全体を完成させることができる見通しが立たない状況となる。

 そもそも、今般の変更申請が必要となったのは、本来、沖縄防衛局について、事業実施前に必要最低限の地盤調査を実施すべきであったのにもかかわらず、これを実施せず、不確実な要素を抱えたまま、見切り発車したことに全て起因するものと考えている。

 その結果、出願時に示した工期を大幅に延伸しなければ埋め立て工事を完成させることができなくなり、また、当初の想定を上回る莫大(ばくだい)な経費を追加せざるを得なくなった。埋め立て工事が周辺環境に与える影響は甚大であり、かつ不可逆的であることからすると、事実上無意味なものとなる可能性がある、埋め立て工事をこれ以上継続することは許されることではない。

 沖縄防衛局においては、今回の計画変更に関する工事のみならず、全ての埋め立て工事を中止すべきだ。

 辺野古の埋め立て工事は普天間飛行場の危険性の早期除去につながらないことが明白となった現状を踏まえ、県としては今後も政府に対し、対話によって解決策を求める民主主義の姿勢を粘り強く訴えるとともに、日米両政府に対し、普天間飛行場のすみやかな運用停止を含む、一日も早い危険性除去を求めて参る。

 県民、国民においては、なお一層のご理解、ご支援、ご協力を賜りますよう、よろしくお願いしたい。


 

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