<講演・現場から>地域と子をつなぐ仕組みを 政策と社会の連携が重要に


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地域と子つなぐ仕組みを
 
糸満朝規さん 県子ども生活福祉部 子ども未来政策課
 

糸満朝規さん

 相対的貧困とは「その地域や社会において『普通』とされる生活を享受できない」ことをいう。沖縄の平成27年度の相対的貧困率は29・9%である。全国は13・9%なので、全国の約2倍貧困率が高い。それから6年近くが経っているが、さまざまな問題があり同じ調査は行っていない。

 県は重点施策の一つに「つながる仕組みの構築」を挙げている。子ども食堂や無料塾などの取り組みがある。子ども食堂は市町村が中心に進めているが、無料塾は県で実施している。 貧困対策として、短期的・長期的視点で対処している。現在困っている子どもたちを助けるために生活支援や経済的支援などを行っている。無料塾のような教育の支援など将来への投資も実施している。また、所得の向上、いわゆる稼ぐ力が強化されれば、子どもの貧困率も改善すると考えている。


政策と社会の連携 重要に
 
吉永亮太さん 県商工労働部 マーケティング戦略推進課
 

吉永亮太さん

 「稼ぐ力」をテーマにした万国津梁会議で将来像を議論している。稼ぐというのは金を得ることが主な意味ではなく、仕事に励むことだ。紡いだ糸を巻き取る道具「かせ」に由来する。繭から丈夫な糸が紡がれていくように、一人一人の経済的、精神的豊かさにつながる、仕事の延長に一人一人の成長と未来を描ける、そのような取り組みにしたい。ひらがなの「かせぐ」が共感を持てる。かせぐことを通し、貧困問題を解決する。

 沖縄県の月額平均給与は22万円で、平均世帯人数は3人。世帯の相対的貧困ライン23万円の下だ。ミッション達成とビジョンの実現を念頭に、目標とする数値設定は「沖縄県全産業平均の一人当たりの月額給与23万円を上回る」。これを必達の目標にしたい。

 給与は10年間で平均5・6%上がっているが、23万円を超えるのは8年かかる。これでいいのかという議論があり、3年で23万円を突破し、その後は全国平均を目指すという案が出ている。産業別のばらつきがあるので「3年以内に一人当たりの月額給与を平均で1万円アップ」という目標設定にした。

 「政策と社会の連携」がキーワードだ。県の政策だけでなく、社会と連携しながら取り組むのが重要だ。一つの政策として認証制度を考えている。給与平均、正社員比率、財務の透明性を評価の対象として設計できればと考えている。コミュニティー化することで情報の密度が上がる。みんなで給与も上げ、かせぐ力もつけて、社会課題を解決し、その先にある成長、未来を描いていく。そういった沖縄を実現できればと考えている。


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