防衛局、辺野古沈下の懸念把握していた 埋め立て3年前 共同通信が文書入手


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米軍普天間飛行場の移設先として埋め立てが進む、名護市辺野古の沿岸部。奥は軟弱地盤が存在する大浦湾=2020年4月

 米軍普天間飛行場の移設先となる名護市辺野古沿岸に軟弱地盤が広がる問題を巡り、埋め立てが始まる3年前の2015年の段階で、地質調査した業者から地盤に問題があると防衛省沖縄防衛局が報告を受けていたことが27日、分かった。「長期の沈下が考えられる」と施工上の懸念を明記した防衛局の関連文書を共同通信が情報公開請求で入手した。政府はこうした経緯を当時公表していなかった。

 玉城デニー知事は今月25日、「完成の見通しが立たない」として軟弱地盤改良に絡む防衛局の設計変更申請を不承認とした。政府は対抗措置を講じ移設を推進する方針だが、埋め立て開始後まで非公表とした政府対応に反発が強まりそうだ。

 文書によると、辺野古沖の大浦湾で海底地盤を調べていた業者が15年4月、建設区域の南東部の「B28」という調査地点は「土木的問題が多い地層が厚く堆積している」と防衛局に報告した。「粘性土が比較的深い深度に厚く堆積していることが確認されたため、長期の圧密沈下(2次圧密)の問題が考えられる」とも指摘した。文書には防衛局が内容を確認したことが記されている。

 防衛局は13年の埋め立て承認申請で、建設区域に「長期間にわたって圧密沈下する軟弱な粘性土層は確認されていない」などとしていた。政府が軟弱地盤の存在を認め大規模な地盤改良が必要と正式表明したのは、土砂投入を始めた翌月の19年1月だったが、今回の文書により、地盤を巡る危機感が早期に生じていたことが裏付けられた。

 この地点は問題を報告した業者のボーリング調査で、軟弱層が海面下70メートルに及ぶことが判明。16年3月にまとめた防衛局の報告書に調査データなどが盛り込まれたものの防衛局が軟弱地盤をいつから、どのように認識したかなどはよく分かっていなかった。報告書自体は、作成の2年後に市民団体メンバーの北上田毅氏が情報公開請求で入手するまで公にされなかった。

 15年当時に発表しなかった理由について防衛局は「一般にボーリング調査などの結果は、その都度公表していない」などとし、具体的に回答しなかった。

(共同通信)


<用語>辺野古の軟弱地盤問題

 米軍普天間飛行場の移設先である沖縄県名護市辺野古沿岸の大浦湾で、粘性土などの緩い地層が海底の深くまで存在することが政府の調査で確認された。政府は砂を締め固めたくいなど約7万1千本を打ち込む大規模な地盤改良が必要だとする。移設工期は当初想定の5年から約9年3カ月に延長、総工費は約2.7倍の約9300億円を見込む。B27と呼ばれる地点が最も深刻で、政府は海面下77メートルまで軟弱だと説明。市民団体などは同90メートルまで軟弱地盤があり、他の地点を含む全体の地盤改良で環境影響が大きくなると指摘する。