知事、戦没者遺骨の使用回避も狙う 土砂採取地拡大に歯止め<辺野古不承認の深層>5


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名護市辺野古の新基地建設埋め立て使用で批判が上がっている糸満市の土砂採取場所=2月、糸満市米須(小型無人機で撮影)

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けた沖縄防衛局の設計変更による影響は、埋め立てられる辺野古・大浦湾にとどまらず、県内全域に広がる。玉城デニー知事は、設計変更の不承認を発表した記者会見で、本島南部地域に残る沖縄戦戦没者の遺骨についても言及した。

 防衛局は当初の申請書で、県内の土砂採取地として国頭地区と本部地区のみを挙げていた。だが、2020年4月に県へ申請した設計変更で、土砂採取の候補地を県内7地区9市町村に広げた。県外からの土砂を規制する県の土砂条例を回避する狙いがあった。

 防衛局の計画で事業に使う土砂などは約2千万立方メートルに上る。仮にその全てが県内で調達された場合、山が削られて風景が一変する。変更ではうるま市の宮城島や宮古島市、石垣市、南大東村など離島も追加されており、島をまたぐことで生物多様性のかく乱につながる恐れもある。

 

■広がる世論

 防衛局の設計変更は、沖縄戦の激戦地だった「南部地区」(糸満市、八重瀬町)も追加するものだった。沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松代表は、遺骨が残る土砂を基地建設に使うことは「戦死者への冒とくだ」と訴え、東京や沖縄でハンガーストライキを起こした。政府に計画中止を、県に不承認を求めた。玉城知事も現場を訪れ、具志堅代表から直接、思いを聞いた。

 沖縄戦では多数の県外出身者も亡くなっており、南部地域の土砂を基地建設に使うことに反対する世論は県外にも広がった。

 具志堅代表らは全国1743の県議会・市町村議会へ、遺骨が残る土砂の使用に反対する意見書可決を促す要望書を送った。支援者によると今月9日までに、県内では27議会、県外では少なくとも111の地方議会が意見書を可決した。

 

■思い反映

 県によると、土砂に関する設計変更の審査基準は、水質の悪化や有害物質・濁りの拡散、生物への影響などを見ることになっている。遺骨混入は基準に含まれず、不承認の理由には盛り込めなかった。

 ただ、防衛局は、県の承認を得ない限り、南部を含む追加地区からの土砂を使うことはできない。

 玉城知事は不承認の発表会見で、防衛局の設計変更を認めれば、遺骨が混じる土砂が使われる可能性に言及し「悲惨な戦争を体験した県民・国民や、遺族の思いを傷つける行為は絶対にあってはならない」と強調した。遺骨について言及した意図を問われ、「『遺骨が混じる土砂を埋め立てに使うべきではない』という声に真摯(しんし)に寄り添う思いから、コメントに入れた」と思いを説明した。

(明真南斗)
(おわり)