子どもたちの「心のブレーキ」 大城譲次(島尻教育研究所所長)<未来へいっぽにほ>


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大城讓次(島尻教育研究所所長)

 私たちの生活のさまざまな営みについて、これまでの「当たり前」が通用しない状況が続いている。昨年6月の学校訪問の時のこと。休校明けの学校では「三密」を避けるという絶対命題の下、先生方は授業の進め方や消毒対応など、感染拡大防止対策に追われていた。先生方のご苦労と課題解決に真摯(しんし)に向き合う姿には、頭が下がる思いである。マスク姿で学校生活を送る子どもたちを見て気になっていたことの一つに、「心のブレーキ」のことがあった。

 子どもたちは音楽の授業でも歌を歌えないなど、さまざまな行動制限の中で学校生活を送ることを余儀なくされていた。掲示物にも「○○しない」などの表示が目についた。

 このような状況下では、友だちと交流することに対しても意欲が減退するなど、活動することに対して自らブレーキをかけてしまうのではないか、と気にかけていた。学年齢が低いほどその影響は大きいと思われた。

 私は先生方に、感染予防対策を講じた上で、子どもたちの活動を後押しする仕組みづくりを通して、彼らを激励し続けてほしいとお願いした。子どもたちは純粋無垢(むく)で、大人が考える以上にさまざまな能力を備えていると思われるが、彼らの活動欲求は安全安心な環境下で満たされるからこそ、たくましく生きる力につながっていくことを心に刻みたい。

 今、ワクチン接種が進むなどの状況で以前の日常が戻りつつあるが、児童生徒の登校しぶりが増加するなど、懸念されていたことが現実に起きている。今こそ私たち大人は、子どもたちに「〇〇すればできる」という文脈で激励し続ける必要がある。そして子どもたちがキラキラと目を輝かせ、何かに夢中になることを日常の当たり前の光景にする責務がある。