【識者談話】南西諸島に軍事拠点、人権侵害は正当化されず(島袋純・琉大教授)


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島袋純琉球大学教授

 2000年の地方自治法改正で、国と地方の関係は上下関係ではない対等な協力関係となった。実態は国策が優先で、地方は従うしかない状況が続いている。今回の計画は台湾有事を想定し、距離の面で南西諸島での共同作戦を打ち出しているのだろうが、本土でも同様の状況が起きうるのか疑問だ。日米両国の二重基準を感じる。

 住民保護は自衛隊も米軍も役割と認識しておらず、自治体の役割ということになる。宮古や八重山で各5万人前後、本島では100万人以上が居住している。輸送能力不足に加え、有事には空路・海路もストップし、島から逃げることができなくなる。県外からの移入に頼る食料や生活物資の確保も難しくなる。台風や地震とは全く規模が違い、市町村ができる仕事ではない。

 国連や国際法での議論に基づけば、軍事化は土地の権利の侵害につながる。軍事化が理由であっても、沖縄の人々の人権侵害は正当化されない。少なくても沖縄の中では「軍事化が人権侵害で自決権の否定になる」と痛みを共有し、連帯につなげていく必要がある。

 国策であっても沖縄の人々の同意は必要で、日米両国と共同決定者となることができる場が必要だ。同意権・拒否権を伴った合意形成の協議に、沖縄の人々の参加を確保する必要がある。

 (政治学)