【記者解説】男性優位の正採用 企業が働き方の環境整備を<女性就労状況アンケート>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
イメージ写真

 県内の売上高上位企業を対象にした女性の就労状況アンケートでは、女性の従業員数(2万6681人)は男性(2万1472人)を10%(5209人)上回り、沖縄において女性の社会進出が「活発」な側面が見て取れる。だが、正社員における男女比率は逆転し、採用における男性優位がうかがえる。働く女性の多くが「非正規」として弱い立場に置かれているなど、性別による役割分担が根強い就労構造が浮き彫りとなる。

 管理職に占める女性の割合は約2割(1124人)、経営の意思決定に携わる取締役に就く女性はわずか1割(51人)と、キャリアが上がるにつれて女性の比率はさらに低下する。資質や実績があっても、女性のリーダー登用を阻む「ガラスの天井」が存在すると言わざるを得ない。

 アンケートの自由回答では「管理職への昇進を希望しない女性社員が多い」「結婚・育児で(責任の度合いが低い)一般職への降職を希望する傾向にある」など、女性管理職の少なさは女性社員自身の働き方の選択や職業観であるとする記述もあった。

 実際、家庭内の家事や育児と職務との両立に不安を持ち、女性が管理職への登用を敬遠する傾向はみられる。だが、女性社員だけが仕事と家庭のはざまで昇進や働くことの断念を迫られるのは、機会均等からは程遠い。

 その結果、女性と男性とで生涯賃金や資産形成能力などに明らかな差が生まれ、社会全体の男女平等や女性の自立を阻む要因となる。女性の登用が進まない現状を企業が是認すれば、期限に定めのある非正規雇用が多い就労構造や、女性の一人親世帯の困窮など、沖縄の社会課題を放置することにつながる。

 企業が真に「女性活躍」を実現するには、出産や育児、介護などライフステージに合わせた働き方を選択でき、性別にかかわらず全ての社員が能力に応じたキャリアを重ねていける環境整備が必要になる。同時に、男性社員が家事や育児に参画することにインセンティブ(誘因)を設けるなど、企業が制度を通して率先して性別役割分担を変えていくことも求められる。
 (呉俐君)