果実目利き50年以上 富士物産の仲田副社長「県産の魅力広めたい」


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男性がほとんどの競りの現場で、目利きした品物を競り落とす富士物産の仲田笙子副社長(右端)=5日、浦添市の県中央卸売市場

 沖縄県浦添市伊奈武瀬の県中央卸売市場で5日に行われた、青果の初競り。卸売業者や仲卸業者のほとんどを男性が占める中、仲卸業・富士物産=浦添市=の仲田笙子副社長(78)は競りに参加する人だかりの最前列に立ち、次々と品定めをして競り落としていく。「私自身が、太陽の光をたっぷり浴びた県産果実の大ファン。良い品物はしっかりと評価し価格を付けることで、生産者の意欲向上にもつなげたい」と顔をほころばせる。

 富士物産は、仲田副社長の夫である重利氏が1967年に立ち上げ、夫婦二人三脚で経営していた。2011年に重利氏が死去した後は、仲田副社長が社の中核を担うようになった。「仕入れには50年以上携わり、県中央卸売市場には1983年の開設当初から通い続けている」と話す。

 マンゴーやタンカンなど季節の果実を色や形、香りを便りに素早く品定めしていく。過去には約2キロのマンゴーを3万円で競り落としたこともあり、「良い品にはその価値に見合った対価をしっかり支払うのが信条だ」。目利きと心意気に、市場関係者の多くが「尊敬する」と声をそろえる。

 近年は品質向上も相まり、県産果実の需要は県内外で高まっている。特にマンゴーやパイナップルは高値で取引されている。仲田副社長は今以上に価値を高め、魅力を広めたいと考えている。「沖縄でしか作れない大切な果物を守ることは、生産農家も守るということ。自分にできることをコツコツと続けたい」と語った。

 (当銘千絵、写真も)