【深掘り】石垣市長選「オール沖縄」分裂含み 陸自配備めぐり亀裂 一騎打ちの流れ一転


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石垣市長選で砥板芳行氏を擁立したことについて市民らに説明する市議会野党議員ら。砥板氏の擁立に反発する野党市議は出席せず、空席が目立った=6日午後、石垣市

 【石垣】2月20日告示、同27日投開票の石垣市長選は、対決の構図がいまだ流動的な状況だ。昨年末、現職の中山義隆氏(54)が4期目に向けて出馬を正式に表明したのに対し、市議会野党は市議の砥板(といた)芳行氏(52)を保革合同で擁立することを決めた。一騎打ちの流れが固まったかに思われたものの、年が明けて野党内で新たな候補者の擁立を模索する動きが表面化。「オール沖縄」を中心とした野党は分裂含みの様相も呈している。

 中山氏、砥板氏ともに保守系で、これまで市内への陸上自衛隊配備計画を推進してきた。このため市平得大俣への陸上自衛隊配備計画を抱える地元住民や革新支持層の一部に、砥板氏の擁立を決めた選考への反発が収束していない。

 野党側は市政刷新を見据え、中山氏の市政運営に批判的な保守票を取り込める保革相乗り候補の擁立を目指してきた。選考が難航する中で昨年12月末になり急きょ、砥板氏の擁立が発表された。

 砥板氏は、市役所新庁舎建設工事の発注の在り方を巡って中山市政と距離を置くようになっていた。一方で、これまで自他共に認める自衛隊石垣配備の推進論者であることから、「支持者を含めて簡単に納得はできない」とさざ波が立った。

 野党側は当初、保守系の元県議の擁立を視野に入れていたが、元県議が昨年夏に死去。その後、中山市政と距離を置く保守勢力も選考委員会のメンバーに加える形で、候補者調整を進めていた。

 昨年12月、野党や一部保守、陸自配備計画の住民投票を求める市民団体が調整の上、住民投票の実施などを条件に、議長経験もある保守系の元市議に出馬を要請した。だが元市議に要請を断られると、保守系メンバーの提案を受ける形で、わずか数日後に砥板氏の出馬が急転直下で発表される運びとなった。

 その発表の席で、砥板氏は陸自配備計画の賛否を問う住民投票の実施を目指す立場を表明した。しかし、住民投票案が市議会で提案された際に、議案の否決で中心的な役割を果たした議員の一人が砥板氏だった。

 陸自配備計画に反対する市議会野党会派「ゆがふ」の花谷史郎市議は「砥板氏は配備計画を進めてきた側の立場だ」と反発し、共闘を拒否。1月に入り、会派として独自候補の模索を本格的に始めた。

 これに対し、これまで選考委での調整を担ってきた野党の主要メンバーらは、昨年1月の宮古島市長選で、かつて自民党の県議だった座喜味一幸氏を保革相乗りで擁立して市政の転換を果たした共闘の枠組みを強調。石垣市長選でも保守の票を切り崩す候補者でなければ当選は難しいという認識を示す。

 引き続き砥板氏への一本化に理解を求めて、ゆがふ側との調整を続ける構えだが、野党の支持層には「『打倒中山』だけで砥板氏を推すなら、手段と目的が逆だ」という不満は消えず、一致点を見いだすのは容易ではない。

 (西銘研志郎)