「子どもが世話、美談ではない」「虐待や貧困と重なる」沖縄のヤングケアラー調査で識者


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 沖縄県のヤングケアラー調査結果の公表を受け、識者らは、結果は「氷山の一角」であり、学校を問題把握の場とする重要性を指摘した。教育現場からは「実際はもっと多い」とさらなる実態調査を求める声も上がった。 

 沖縄国際大の比嘉昌哉教授は今回の調査を「ヤングケアラーの概数を把握し、次年度以降の調査への第一歩」として評価。「子どもが家族をケアすることを美談として捉えると、本人がしんどさを打ち明けられない。家族にケアを求める社会自体が問題だ」と訴えた。

 また学校は見えづらいヤングケアラーの問題を発見できる場である一方、学校だけで解決できるものではないとし「本人を含めて家族丸ごと支援することが重要で、積極的に手を差し伸べる必要がある」と語った。

 弁護士でNPO法人子どもシェルターおきなわの理事長の横江崇さんは「ヤングケアラーのような子どもは昔から一定数いたはず。いわゆる『お手伝い』との明確な線引きが難しく、先生によって認識の違いがあると思う。今回、県が問題意識を持ち調査をしたのは良かった」と語った。一方「ヤングケアラーの多くは虐待や貧困問題を抱える家庭と重なる。先生たちには要保護児童対策地域協議会の役割について知ってほしい」と話した。

 県高等学校長協会の冨里一公会長は結果に「実際はもっと多いと考えている。学校生活に影響が出ている状況にやるせない思いだ」と語った。必要な施策に、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーの拡充を挙げ「継続的な啓発と子どもの実態調査を行い、支援につなげてほしい」と求めた。

 (吉田早希、嶋岡すみれ)