コロナ禍で寂しさ抱える子どもたちを絵で解放 フィンガーペインター由郁子さん


社会
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 指で絵を描くフィンガーペインター由郁子(ゆかこ)さん(38)=沖縄市=は、県内の保育園や幼稚園、学童、小中高校を巡り、ライブペイントやペイント体験で子どもたちと触れ合う活動を続けている。活動を通じ、コロナ禍で子どもが寂しさを抱えていることに気付いた。「絵で感情を表現する時間をつくってあげたい」と、訪問活動に力を入れている。

ライブペイントなどを通じ、子どもたちと触れあう活動を続けているフィンガーペインター由郁子さん=2月22日、沖縄市内のアトリエ

 兵庫県出身。経営者の父は家庭を顧みないタイプで、母も家事や地域活動で余裕がなかった。「経済的な豊かさはあったが、心は豊かではなかった」。ただ、絵を描いて賞を取ると、厳しい父が喜び、画材も買ってくれた。幼少期は絵を描くことで愛情が得られると思っていた。

 介護職に就き、絵は趣味で続けた。運命を変えたのは沖縄旅行。自然の色彩に刺激され「ここでなら絵を描ける」と感じ、2014年に移住した。当初は筆や鉛筆で描いていたが、ガジュマルの生命力を表現するため、直感的に指で描いたところ、はまった。

 18年に介護職を“卒業”、アーティスト活動に専念している。ワークショップで訪れた保育園に、鼻と口がなく、目だけの顔を描く園児がいた。コロナ禍の影響を感じ衝撃を受けた。活動を続けるうちに、不登校の増加など子どもを巡る問題が耳に入るようになった。リモート授業が続き、仲良しだった友達に声を掛けられなくなった子もいると聞いた。

 訪問先で重視するのは美しさやきれいさではなく、感情を絵で表現すること。真っ黒な絵や真っ赤な絵を描く子もいるが「感情を出せているので、それでいい。気持ちを表現することが大事」と受け止める。「私も絵で救われていたから」

 園や学校を訪問する活動は、知人の紹介を通じて行っていた。

 今後は対象を広げる予定で、画材購入などの活動資金に充てる協賛を募っている。

 「子どもがきらきらしていたら、大人も笑顔になる。みんなと一緒に輪を広げられたら」と語った。協賛金や由郁子さんの活動に関する情報はhttps://fingerpainter-yukako.jimdofree.com/

 (稲福政俊)