「後輩には負けられない」が転機に 立浪部屋入門の仲宗根龍さん 祖母の勧めで相撲の道へ


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卒業証書を手にガッツポーズする仲宗根龍さん=1日、うるま市の中部農林高校(喜瀨守昭撮影)

 4月から東京の立浪部屋に入門することが決まった中部農林高校3年の仲宗根龍さん(18)。1日、卒業式を終え、高校3年間の相撲に没頭した日々を振り返った。

 仲宗根さんは2019年4月に中部農林高校に入学した。当初はアルバイトがしたかったが、祖母の當山初江さん(72)に勧められ相撲を始めた。小学4年から4年間、柔道の経験があり、相撲部員と互角に渡り合えると思っていた。
 しかし、予想とは裏腹に先輩だけでなく、同級生にも勝つことはできなかった。悔しさのあまり「3年間で絶対に抜いてやる」と決意した。
 1年生のほとんどの期間は四股踏みや、ぶつかり稽古などの基礎練習に費やした。「相撲を取らせてもらえなくて、つらくなることもあったが、強くなるためには必要だった」と振り返る。

 2年に進級し、後輩を持ったことが相撲人生の転機になった。「後輩には負けられない」。先輩や同級生を追い掛けるだけでなく、後輩に追い抜かれたくないとの思いから、さらに練習に打ち込むようになった。

 新型コロナウイルスの影響で部活動が休止になると縄跳び、腕立て伏せ、体幹トレーニングなどを進んでこなした。結果はすぐに表れる。インターハイ県予選では8位、その後の新人大会では団体優勝、個人無差別と重量級で3位と大会ごとに成績を伸ばした。「さらに上に行くには、稽古をするしかないと思っていた。1人でできることは何でもやった」

 3年になると、インターハイ県予選で個人重量級と団体で優勝した。長崎県で開かれた九州大会では、団体で3位になるなど躍進した。
 大会後、立浪部屋の関係者からスカウトの連絡があり、関係者が沖縄まで会いに来た。大会で結果を出したとはいえ、予想外の出来事に「驚いた。声を掛けてもらえるとは思っていなかった」と話す。相撲を勧めてくれた祖母の夢は孫が関取になること。仲宗根さんは「チャンスがあるなら恩返しがしたい」と決意した。

 4月からは、東京で稽古に励む。母の夏樹さん(42)は「最後まで何かをやり抜いたのは、相撲が初めて。3年間で頼もしくなった。夢に向かって頑張ってほしい」と目を細めた。

 相撲部の和宇慶忠勝顧問(39)は「努力を惜しまない姿勢が結果につながった。強いだけでなく、応援される力士になってほしい」と期待した。

 仲宗根さんは「基礎をゼロから学んで、プロの世界で対応できる体作りをしたい。祖母の夢をかなえ、横綱も目指せるように挑戦していきたい」と前を見据える。県勢初の横綱誕生に期待がかかる。 (名嘉一心)


 

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