政府の地震調査委員会による「長期評価」で、南西諸島周辺、与那国島周辺で確率は不明なもののマグニチュード(M)8程度の巨大地震が発生する可能性が指摘された。ひとまわり小さいM7~7.5の大地震が30年以内に発生する確率は90%以上~60%程度と高く、専門家は「防災対応の率先県に」などと来るべき大地震への備えを求める。
前回2004年評価では、南西諸島周辺と与那国島周辺でM8級の巨大地震が起こる可能性は考慮されていなかった。
今回はこの領域内で17世紀以降に喜界島地震(M8.0、1911年)が発生していたことを考慮し、同程度の規模の地震が領域内のどこでも発生する可能性があるとした。ただ、確率は不明で、対象領域を狭めるだけの科学的知見もないため広大な領域設定になったという。
巨大地震や大津波を引き起こすプレートの境目である「固着域」が沖縄本島南方沖にあることを指摘してきた中村衛琉球大教授(地震学)は、M8級の巨大地震が起こる可能性が盛り込まれたことについて「海底地殻変動観測によって沖縄島沖に固着域があるなどということから、見方が変わってきたのかもしれない」と推察した。
同時に「南西諸島北西沖の沈み込んだプレート内のやや深い地震」が、30年以内に発生する確率が60%程度と高いことにも着目する。「沖縄の地震被害ではこのタイプの地震による被害が多い。広い範囲で大きい揺れになる可能性がある。危険性が高い」と指摘した。
今回は1771年に発生し、八重山地方で大きな被害をもたらした明和の大津波も評価された。同様の地震が今後発生した場合、津波から地震の規模を推定する「津波マグニチュード」(Mt)で8.5程度になるとされる。過去2千年では、同規模以上の津波が1771年を含めて「少なくとも3回発生」していると記した。
県の地震被害想定調査検討委員会の委員長を務めた仲座栄三琉球大教授(防災工学)は「これまでの調査結果からは明和津波規模の巨大津波の発生は明和津波のただの1回」だとして、「明和津波のような巨大津波の発生を予測するだけの資料は十分ではなく、その発生を常に念頭に置いた対応が求められる」とした。
明和津波に関する古文書では遡上(そじょう)高が85メートルに達したとして「巨大津波への防災対応の率先県を目指すことが求められる」と強調した。(仲村良太)