伊江島の給食支え55年…最後のご飯炊きあげ500人へ 80歳夫婦「残さず食べてくれてうれしい」


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最後のご飯を炊き上げた東江昇さん、京子さん夫婦=16日、伊江村東江前の伊江製パン

 【伊江】55年にわたり伊江村内の学校給食にパンとご飯を提供し続けた、伊江製パンの東江昇さん(80)と京子(けいこ)さん(80)夫婦が16日、最後のご飯を炊き上げた。沖縄の復帰前から島の子どもたちの成長を支え、苦難を乗り越えながら給食を支えてきた。「どんなことがあっても仕事は休まない」「自分たちの用事は後回しにして、島の子どもたちのために責任をもってご飯を提供し続ける」と、信念を貫き通してきた2人は満足感に浸っていた。

 1966年、昇さんは県外企業の面接を受け結果が出るまでの間、京子さんの父の手伝いで、伊江製パンで働き始めた。島唯一のパン屋で、当時の給食にはコッペパンを提供していた。企業から内定の連絡を受けるも「このまま店を引き継いでほしい」と頼まれ、店を引き継ぐことを決めた。

最後の給食を見守り、生徒を激励する昇さん=16日、伊江中学校

 76年から米飯の提供も始まり、多いときには千人以上にパンとご飯を提供した。7人ほどの従業員がいたが、生徒数の減少に伴い夫婦2人だけになった。パン焼き機の老朽化でパンの製造を終了して2年前から村外業者へ委託し、ご飯のみとなったが、高齢も重なり本年度で終了することとなった。

 この日も2人はいつものように午前5時から村内の児童生徒や職員約500人分の麦ご飯を炊き上げ、各学校に届けた。感謝の気持ちを伝えようと、伊江中学校でセレモニーが行われた。内間大惺(たいせい)さん(2年)は「毎日おいしい給食を提供いただき、大きく成長できたのは東江さん夫婦のおかげ。長い間、伊江島の子どもたちを支えてくれて感謝します」とお礼を述べた。

 昇さんは「努力という言葉が一番好きで、この仕事をずっと続けてきた。残さず食べてくれたことが一番うれしかった。食の大切さを認識し、健康になって勉強、スポーツに励んでほしい」とエールを送り、趣味のハーモニカ演奏を披露した。京子さんは「子どもたちが学校から帰るときに店の前で『おばー、パン、ご飯おいしかったよー』と言ってくれたときがうれしかった。今日で終わるのは寂しいが、互いに健康で頑張ることができた」と語った。

 米飯の製造は村内の別の業者に引き継がれ、2人は趣味の三線を習いながら、ゆっくり過ごすという。
 (金城幸人通信員)