沖縄県が7日に決定した「平和で豊かな沖縄の実現に向けた建議書」は、戦後27年間の米施政権下で生じた経済的、社会的なひずみに触れつつ、今なお続く基地問題を「構造的、差別的」だと強い言葉で表現した。玉城デニー知事は記者会見で建議書について「魂を込めた」と強調。建議書を日米両政府に突きつけることで、基地問題をはじめとする沖縄の不条理を全国民に訴える契機としたい考えだ。
新たな建議書は、米側に届けることを強く意識し、米軍基地から派生した事件事故を具体的に例示したほか、辺野古新基地建設を巡る政府の対応にも「地方自治」の観点から切り込んだ。
在沖米軍基地の縮小を求める県民の声の高まりを、日本の「国内問題」として議論を終わらせるのではなく、米国側にも当事者として捉えてもらうことを主眼に置いている。
新たな建議書は、琉球政府の屋良朝苗主席が1971年に提出した「復帰措置に関する建議書」(屋良建議書)と現状を比較検証した上でまとめた。屋良氏は建議書で「沖縄は余りにも、国家権力や基地権力の犠牲となり、手段となって利用され過ぎた」と触れ、沖縄の自立や自己決定権の確立を強く願っていた。
一方、新たな建議書は政府の沖縄振興の成果を一定程度盛り込んだほか、国家戦略としての沖縄振興の推進を引き続き求めている。
第6次の新たな沖縄振興計画が始まるため、整合性をとったとみられるが、自立型経済の構築に向けた具体的な要求は乏しい。復帰50年が経過してもなお、政府の政策実現や資金投下が必要だと明記したともいえ、屋良建議書で掲げた「自立」とは相反しているとの見方もできる。
屋良建議書、新たな建議書はともに「基地のない平和の島」を求めた。だが、屋良建議書が沖縄への自衛隊配備に反対したのに対し、7日の記者会見で玉城知事は「専守防衛の名目における組織としての自衛隊を認めている」と述べた。先島への自衛隊配備に反対意見が根強い中、「国家権力や基地権力の犠牲」からの脱却を求めた50年前の理念や要求とは明確な違いが出た形となった。
(池田哲平)