【記者解説】自民の本音?地位協定の改定機運高まりへの恐れ反映か 自民党、機関紙見解


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日米地位協定改定を求める意見書について「共産党系等の会派から提出される」「日米同盟の不安定化を狙って」などと記す自民党の機関紙インターネット版

 日米地位協定に関する自民党機関紙「自由民主」の記述は、改定を求める機運が国民全体で盛り上がるのを恐れる自民党の本音が透ける。対米従属の根源である地位協定の改定に触れようとしない自民党の姿勢には、国の主権が損なわれているという意識や国民の人権を重んじる感覚の欠如がにじみ出ている。

 機関紙は共産党が中心となって日米安保の不安定化を図ろうと地位協定改定を求めていると印象付けようとする。だが、地位協定の問題は日米安保の賛否とは別次元の問題だ。

 特に県内で地位協定は命や暮らしに直結する課題に位置付けられ、県と県内の基地所在市町村でつくる県軍用地転用促進・基地問題協議会(軍転協)などは改定を求めてきた。

 県議会は米軍機に関わる事故やトラブル、米軍関係者による事件の度に「県民の生命・財産を守る立場」(意見書)から、自民党会派も含め全会一致で地位協定の抜本的な改定を求めている。全国知事会も、2018年に日米地位協定の抜本改定を含む政府への提言を全会一致で採択した。

 自民党が長く政権与党を担う中、日本政府は地位協定の改定に取り組もうとしないどころか、当初は認めていなかった範囲にまで条文の解釈を広げることで米軍に有利な運用を進めてきた。例えば、当初は提供施設・区域外での訓練については一定の制限があると捉えていた。だが、現在は実弾射撃などを伴わない限り米軍が施設・区域の外でも訓練が認められるというのが政府の見解だ。

 自民党県連の関係者は「沖縄では改定を求めているのに、本部は何を考えているのか」と不快感を示す。だが、記述を訂正しようとする動きは表立って見られない。地位協定改定のため、政権との「パイプ」を発揮することも一つの手ではないだろうか。
 (明真南斗)