「あれはバンクシーでは」。素性不明の路上芸術家として知られるバンクシーの作品に似たストリートアートが描かれているという情報が県内で相次いでいる。作品の落札価格が30億円近くに達し、世界的に注目される芸術家が沖縄で活動していればと、想像するだけでも夢は広がる。バンクシーのwebサイトにあるアドレスにメールを送り、真贋を確認してみた。
バンクシーは英国を拠点に、主に型紙を使ったステンシルアートで街中にグラフィティ(落書き)を描くストリートアートの芸術家。反戦や反権力など政治色が強い作風で知られる。大英博物館などに無許可で作品を陳列したこともある。
県内でバンクシーの作風に似た作品が見つかったのは那覇市や周辺自治体のほか、本島中部から北部でも。
報道される事例もあり、直近では本紙2021年4月14日付に記事がある。グラフィティがあったのは今帰仁村玉城の乙羽トンネル付近。県道72号から細い脇道を下った場所で、バンクシーの作品によく登場するかばんと傘を持ったネズミ、そのネズミを見下ろすように女優のオードリー・ヘプバーンとみられる女性のイラストが描かれている。20年には既に目撃されていたという。
今年1月には那覇市と豊見城市のちょうど境界当たりにある県道7号のトンネルでフードをかぶりバラを持つ人のイラストが見つかった。那覇市の43歳の女性が見つけ、本紙に情報提供してくれた。「子どもと散歩中に『あれっ?』と思って。いつの間にかあった」という。
他にも那覇市内では人の顔のような戦車のイラストが複数箇所で見つかっており、10年以上前からあったという情報もある。
共通するのは、切り抜いた型紙などにスプレー塗料を吹き付けて絵柄を浮かび上がらせるステンシルアートで描かれている点だ。バンクシー作品の特徴に合致する。ただ、ステンシルアートは型紙さえあれば誰でも同じような作品が描ける。既存のデザイン画などを転写して型紙を作ることも可能で、バンクシーの作風を模倣して描くことは難しくない。
本紙はバンクシーの公式HPから沖縄で見られた作品を手掛けたかを確認したが、自動応答のメールが返ってきただけだった。
(仲村良太)
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