復帰直後の沖縄〈50年前きょうの1面〉6月22日「両陣営〝背水の陣〟しく」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。

 

 日本「復帰」直後の1972年6月22日の琉球新報1面トップは、3日攻防に入った沖縄県知事選。「両陣営〝背水の陣〟しく/〝情勢はきわどい〟/本土から大物迎え、残り三日に全力」との見出しで、自民と革新の最終版の票固めの動きを伝えている。記事では「那覇、中部では依然として浮動票が多く、票固めは難航しているため22日からの〝3日戦争〟が最大のヤマ場になることは必至だ」と印している。

 この日の「選挙レーダー」は「いっこうに燃え上がらぬ〝北部戦線〟」との見出しで「〝北部戦線〟は異常あり」と伝えている。セット戦の県議選で無投票となった地区は運動に力が入らず、両陣営とも「テコ入れにヤッキになっているがいっこうに燃え上がらない」と雰囲気を説明している。

 戦後補償に関連しては「補償もれの人に見舞い金/政府、沖縄戦の戦没者遺族に」との見出しの記事を掲載。その内容は「政府は、久米島虐殺事件など遺族に対して補償する準備を行っているが、これまでの調査でほとんどの人たちが戦傷病者戦没者遺族等援護法と沖縄戦戦闘協力死没者等見舞金支給要綱によって救済されていることが判明した。そのため補償もれの人たちに対し見舞い金などを支給する方向で検討を急いでいる」と説明している。 

 自民党総裁選の動向も大きく報道している。「総裁レース本番に突入/まず田中有利に展開/福田氏必至の巻き返しへ」と〝角福戦争〟の闘いとなっていることを照会。出馬も取りざたされていた中曽根康弘氏は出馬を断念し田中氏支持に回ったことから「中曽根氏、出馬断念であいさつ」「田中氏支持を決定/中曽根派総会/内外政で合意書かわす」と関連記事を掲載している。

 このほか「極東に関する極秘文書公開/米国務省が1947年度分」との記事も掲載している。記事によると、今回公開された米極東外交に関する極秘文書には、当時国務省で政策企画委員長で対日占領政策に携わったジョージ・ケナン氏のメモも含んでいる。そのメモの中身については「米国は、日本の経済力が再建されるまで、同盟軍の占領支配の解除を急いではならない。講和条約が調印されるときに、日本が政治的にも経済的にも安定していなければ、共産主義者の浸透を防ぐのはむずかしい」「米国は小笠原、硫黄島、南鳥島などの信託統治および沖縄の軍事施設維持を主張すべきである。日本における米陸軍および空軍の基地施設がある目的に役立つかどうか、はっきりした証拠はない。しかし、航空部隊を伴う米海軍の横須賀基地施設については、今後さらに検討を要する問題である」「日本の防衛に関しては、対日講和条約が、警察力、沿岸警備隊を例外として、いっさいの武装を解除すると規定するべきである」「その結果、日本は外国の侵略に対する自衛力を欠くことになるだろうが、米国としては日本本土に他の外国軍隊が勢力を築くことを防ぐ意志と決意を明らかにするため、太平洋地域に十分な兵力を維持することを米国防政策の原則とすべきである」と紹介している。

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 5月15日で復帰を迎えたが、沖縄を取り巻く状況は復帰して変わったこともあれば、変わっていないこともあった。琉球新報デジタルは、復帰を迎えた沖縄のその後の姿を琉球新報の紙面でどう記したか、引き続きお届けしていきます。