「政治のために被害者を利用…」宮森ジェット機墜落資料からみえる「米軍の本音」


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 【うるま】1959年6月30日にうるま市石川で発生した宮森小学校米軍ジェット機墜落事故について、米国立公文書館所蔵の資料に「石川の悲劇は何も目新しい要素があるわけではない」などと事故を矮小(わいしょう)化する内容が記されていた。

米国立公文書記録管理局から入手した宮森小米軍ジェット機墜落事故に関する資料を翻訳した長嶺將春さん(右)と清水洋一さん=16日、浦添市

 1960年4月18日付の「石川賠償を巡る討議用文書」には「(墜落事故が)交通事故や地滑り事故などで息子や夫を亡くした母親の喪失感・悲哀と比較して、より大きいと少しでも言い張れるのであれば、それは人道に反する」とし、ジェット機墜落事故と他の事故を同等にみなし、賠償金額の算定方法を記している。米軍は日本の不慮の事故の賠償の例を持ち出し、墜落事故の賠償が過度に多いと指摘していた。また、「(被害者ではない人が)問題を長期化させ悪化させることによって、自分たちの都合のよい政治的利益を得るために被害者を利用している」と記していた。

 一方、米空軍のデイル・スミス少将が高等弁務官に宛てた書簡には「整形手術に関して、こうした措置は病院の使命、能力、人員配置の点で手に余る」とし、「米軍に対する憎悪は患者に起こる(見た目の)変形の度合いに比例して大きくなる」と、政治的な理由から被害者により高度な治療を受けさせるように促している。

 宮森小のジェット機墜落事故を取材してきたフリージャーナリストの土江真樹子さんは、この資料について「米軍の本音が出ている」と指摘。書簡の末尾にある「琉球における米国の立場と利益のために」と書かれた部分を引用し「この自己都合の態度に米軍の本質がある」と話した。

(古川峻)