【記者解説】調査結果を4ヵ月公表せず 自衛隊PFAS 防衛省、透ける矮小化


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基地の外まで飛散した泡消火剤を撮影する航空自衛隊関係者=2021年2月26日、那覇市高良

 全国の自衛隊施設で消火用水槽から高濃度の有機フッ素化合物(PFAS)が検出された問題で、防衛省は22日に調査結果を発表したが、3月中旬には業者から調査結果を受け取っており、4カ月間、公表を控えていたことになる。防衛省の情報開示のあり方が問われる。

 公表遅れについて、防衛省の担当者は「今後の対応方針を決めるのに時間を要した」と説明した。だが、汚染水を入れ替える前に火災が発生すれば、PFASを含んだ消火設備を使用せざるを得ず、消火活動を通じて土壌などを汚染する可能性がある。基準を超える検出結果を把握した以上、地元自治体や周辺住民への早急な情報提供が必要だったはずだ。

 琉球新報は独自に調査結果を入手して6月はじめに報じたが、その後も防衛省は「整理中」として正式に認めてこなかった。米軍基地由来とみられるPFASによる河川や地下水の水質汚染が県内で問題となる中、地元自治体は自衛隊施設の調査結果についても早期の公表を求めていた。

 防衛省がようやく調査結果を公表した22日も、午前10時すぎに岸信夫防衛相の会見、午後4時に報道官会見があったにも関わらず、その際の発表はなかった。マスコミに調査結果の文書が提供されたのは、週末の業務が終了した午後6時というタイミングだった。

 防衛省が記者会に発表文を送ったメールの件名も、大臣政務官の他国訪問に関する発表と「他1件」となっており、PFAS関連の調査結果に関する発表を明示していなかった。本来、正式な場で調査結果を報告し、記者団からの質問に応じるべきだった。

 取材対応に後ろ向きな防衛省の姿勢からは、問題を矮小化したい思惑が透ける。施設周辺の住民の健康や生活環境につながる問題だという意識が乏しく、住民軽視と言わざるを得ない。

 防衛省は、今回の調査で確認された汚染水を処分することで幕引きを図りたい考えだ。しかし、過去に泡消火剤を使った際にPFASを誤って拡散させている可能性を踏まえ、水槽だけでなく施設周辺の土壌や地下水など環境調査を改めて実施する必要がある。 
(明真南斗)