「内助の功」「女性ならでは」…表現の背景に性差別 ジェンダー法研究者の谷口さん、モバプリさんらが那覇でトークイベント


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日本社会やメディアのジェンダー平等の遅れについて議論する(左から)乾栄里子記者、モバイルプリンスさん、谷口真由美さん、吉永磨美記者、中塚久美子記者=6日午後、那覇市牧志のジュンク堂書店那覇店

 「失敗しないためのジェンダー表現ガイドブック」(小学館)の出版を記念したトークイベントが6日、那覇市のジュンク堂書店那覇店で開かれた。ジェンダー法研究者の谷口真由美さんとスマートフォンアドバイザーのモバイルプリンスさんをゲストに迎え、ガイドブックを編集・執筆した全国各地の記者たちと討議した。性差別を助長するような表現をメディアが発信していないか、検証しつつ議論を深めた。当日のトークの内容を詳報する。(慶田城七瀬)

 冒頭では編集チームの朝日新聞の中塚久美子記者、徳島新聞の乾(いぬい)栄里子記者、毎日新聞の吉永磨美記者が登壇し、出版の経緯や各章の内容などを紹介した。

 本全体の構成や編集を担当した中塚記者は、ノーベル賞受賞者の妻が「内助の功」という表現で報道されることに違和感を覚えたという事例や「女性ならではの視点」など、記事で使われがちな表現について触れ「女性にもいろいろな人がいる。女性らしさの強調、あるべき姿として無意識に広めていないだろうかという事例と、改善案を提示した」と述べた。

 また本のタイトルから想像されるマニュアル本ではないとし「言葉狩りと言われるが、言葉の意味そのものよりも背景にある思想や考え方を見つめ直そうというのが趣旨だ」と説明した。

 性暴力の表現について執筆した乾記者は、夏の痴漢撲滅キャンペーンの記事でみられる「痴漢が増える薄着の季節を迎え」という書き出しや、性犯罪を伝えるウェブ記事の見出しで「むらむらしてやった」などの事例を「失敗例」として紹介。

 前者は、服装によって被害が引き起こされるとする「レイプ神話」で、後者は「性的欲求だから仕方ない」という性犯罪の容認につながると指摘した。その上で「メディアには『レイプ神話』に裏打ちされた言説が氾濫している。私たちがゆがんだ表現を続けることで、性暴力の告発をできにくくしていないか。(本は)被害者の背中を押すような表現でなければならないという戒めでもある」と執筆の動機を語った。

 毎日新聞の吉永記者は、中央執行委員長を務めた新聞労連の役員について、ジェンダーバランスを見直すために女性特別枠を設けたことや、出版労連の協力を得て出版が実現したことを紹介し「(メディアのジェンダーを)社内で変えられないなら、労組のつながりを生かして自分たちで(指針を)つくろうというのが出発点だ」ときっかけを語った。