観光客から「めっちゃエモい」 瀬長島で三線を弾く高校生「うまくなりたくてハマった」 演奏100回、憩いの場に


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瀬長島の海沿いの歩道で三線の練習を続ける南風原高等支援学校2年の幸地克斗さん=11日、豊見城市の瀬長島

 観光客らでにぎわう週末の豊見城市瀬長島。海沿いの歩道で三線の音を響かせ、道行く人たちを楽しませている高校生がいる。中学の授業で触れた三線のとりこになり、演奏技術を高めることに夢中になっている南風原高等支援学校2年の幸地克斗(こくと)さん(16)だ。11日、この場所での演奏は100回目を迎えた。「目指すは千回。とにかくうまくなりたい」。大好きな海に向かって練習に励む幸地さんの周りには、ちらほらと人が集まり、ちょっとした憩いの場になりつつある。

 「見て、めっちゃエモい」(感情的、情緒的などという意味)。通りかかった観光客が、次々に写真を撮っていく。少しの間立ち止まって、耳を傾ける地元の人たちもいる。練習に夢中の幸地さんは、その様子に気が付かないこともしばしば。時々「いいね」「頑張ってるね」と声を掛けてくれる人もいて、飲み物を差し入れてくれた人もいた。「海と飛行機が大好き。演奏を聞いてくれる人もいて、声を掛けてもらえるとうれしくなる」と笑顔を見せる。

 三線を初めて手にしたのは中学2年。学校の授業で数回練習する機会があった。工工四は「暗号みたいに意味不明」だった。上手に弦を押さえることもできなかったが「下手だからこそ、うまくなりたくてハマった」。その後、祖父の三線を借り、独学で練習を重ねた。

 郷土芸能部がある南風原高等支援学校に進学し、今年3月から週末は、警報級の悪天候でない限り、雨の日も風の日も、海に向かって三線を奏でている。長いときは3時間も演奏する。幸地さんにとっては「練習」だが、波の音と三線の音が重なる沖縄らしい風景は、行き交う人たちにとって路上ライブのようだ。

 この場所で100回目の演奏を迎えた11日は、高校の先生も見に来ていた。「郷土芸能部でも、みんなのお手本になっている。度胸があって、何かに夢中になるっていいなと思います」と目を細めた。
 (嘉数陽)