土地規制法、全面施行へ 沖縄県民多くが私権制限 監視、尾行の可能性も


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 政府は土地利用規制法を20日に全面施行することを決め、今後、政府による個人情報の収集や土地売買の制約を伴う「注視区域」や「特別注視区域」の指定範囲が決定する。米軍や自衛隊の基地が集中し、多くの離島を抱える沖縄は全国で最も広範囲に影響を受けることが確実で、相当数の県民が一定の私権制限を受ける可能性がある。平和団体などからは「民意を無視した強権的な閣議決定」だとして抗議の声が上がっている。 

 土地利用規制法は、自衛隊や海上保安庁など安全保障上重要な施設の周辺約1キロや国境離島を対象に、土地・建物の利用を規制する。区域内にある土地・建物の所有者名や住所、国籍について、登記簿などの公開情報の収集や調査員が周辺の住宅を訪ねて利用実態を調査するとされる。法律の条文には調査に関する縛りがなく、尾行や集会参加の監視などがなされる可能性もある。

 国境離島の範囲に宮古島や石垣島、与那国島全体が含まれる可能性がある。本島でも中北部に集中する米軍基地や、自衛隊機が発着する那覇空港も指定が想定される。

 重要施設周辺の事務所を借りている人や出入り者は調査対象にされ、米軍基地への座り込み抗議や監視活動にも影響を与える可能性がある。

 法曹関係者は危機感を募らせる。沖縄弁護士会は2021年5月、「プライバシーや思想・良心の自由など多くの基本的人権を侵害する恐れが極めて大きい」として法案に反対し、廃案を求める会長声明を発表。さらに、一部施行後の22年8月にも「依然として重大な問題がある」として、全面施行の延期を求める会長声明を出した。

 名護市と今帰仁村、読谷村の議会は21年、同法の即時廃止を求める意見書や決議をそれぞれ賛成多数で可決している。

 政府が閣議決定した16日は「土地規制法を廃止にする全国自治体議員団」「沖縄一坪反戦地主会・関東ブロック」「土地規制法廃止アクション事務局」の3団体が連名で声明を発表した。

 「住民監視と戦争準備のための土地規制法を廃止するための運動を継続していく決意だ」と強調し、閣議決定を撤回して20日の全面施行を停止することや、パブリックコメントで寄せられた多くの意見を尊重し、基本方針などを変更するよう求めた。

 県基地対策課は「状況を注視していきたい」とした。

  (梅田正覚、前森智香子、塚崎昇平)