命の尊さ 世界中に届け 周本記世(がじゅまる動物クリニック院長)<未来へいっぽにほ>


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周本 記世(がじゅまる動物クリニック院長)

 初めてのコラム執筆は、今回で最終回となった。私は学校飼育動物に関わってまだ数年と浅いが、知れば知るほど、どうしたら改善できるか悩んでしまう。簡単に仕組みを変えられない問題の根深さがあるからだ。

 先日、学校飼育のウサギを診る予定が、費用の問題でキャンセルされた。子どもが病気になったら病院へ連れていくのと同じように、飼っている動物が病気になったら当たり前に受診してほしい。法律でもそう定められているが、同様の事例はまだ珍しくない。教員向けに、学校飼育動物の具合が悪くなった場合のフローチャートを作成した。県獣医師会のホームページに掲載されている。ぜひ活用してほしい。

 これまで書いてきた通り、学校飼育動物の意義は「動物の命を大切にする心の育成」である。しかし沖縄の現状は、学校飼育動物を適正飼育し学びに生かせている一部の学校と、そうでない学校とで大きな開きがある。世界的に動物福祉の基本と言われている、飢えと渇きからの自由、不快からの自由、痛み・病気からの自由、恐怖や抑圧からの自由、正常な行動を表現する自由―。この五つの自由を、学校飼育動物に対しても確保し、愛くるしい彼らの魅力と命の尊さが、感受性の高い子どもたちへまっすぐに伝わってほしい。教員や保護者も、そこから学ぶ機会を得られるはずだ。

 そんな未来を10年後、いや5年以内につくりたい。そしてその取り組みを、モデルケースとして全国へ発信したい。この島でひっそりと生きている小さな命を、社会全体で正しく愛(め)でたい。命を大切にする心が、自然環境、そして世界中の人を大切にする心へ育つことを信じて。あなたの元へ、私の想いが届いていればうれしく思う。