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低体重児家族への心理的ケアなど課題 望まない若年出産など早産要因への対策も 〈手のひらの命・低出生体重児の今〉


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
低体重児の家族へのケアなどについて話す琉球大学病院の呉屋英樹医師

 体重2500グラム未満で生まれてくる低出生体重児。沖縄の低体重児の割合は1975年から40年以上にわたって全国1~2位の高さで推移し、97年以降は県内で生まれた子どもの1割を占めている。本紙連載「手のひらの命・低出生体重児の今」では、低体重児の家族が妊娠、出産、育児を通して抱いてきた思いを紹介してきた。

 医療技術の発展で救える命が増えた一方、退院後の医療的ケアや進学など、子どもの成長とともに家族が直面する課題も多い。琉球大学病院周産母子センター(NICU)の呉屋英樹医師に、低体重児やその家族をめぐる現状や課題について話を聞いた。

 ―出産前後の低体重児の家族に対するケアは。

 「突然の出産で低体重児を産んだ人に対しては、さまざまなリスクや、今後予想される経過などを説明する。母親自身の病気などが理由で、あらかじめ低体重児が生まれる可能性が高いことが分かっている場合は、出生前にリスクを説明する。特に救命措置ができるようになる妊娠22週から24週ごろに生まれる赤ちゃんは、亡くなったり合併症や障がいが残ったりする可能性が高いことも伝える」

 「低体重児が予想されているかどうかにかかわらず、両親の不安は強い場合が多く『赤ちゃんと一緒に頑張っていきましょう』と伝えるようにしている。ショックが大きい人には、NICUにいる看護師や臨床心理士にケアをしてもらうこともある」

 ―低体重児と、体重2500グラム以上で生まれる「正出生体重児」の違いは。

 「低体重の子の発達はゆっくりになることが多い。小学生頃までに知的にも身体的にも標準的な発達の段階に追いついてくるが、追いつかずに小学校進学の際にいろいろと悩む家庭もある」

 ―低体重児の家族が抱える不安は。

 「成長していくにつれて不安は変わっていく。予防接種や離乳食は修正月齢(出産予定日から計算した月齢)で進めるのか、保育園には預けてもいいのか、小学校には普通に行けるのか。また(障がいが残るなどした場合)子どもの社会的な立ち位置はどうなるのか、といった相談を聞くことが多い」

 ―低体重で生まれて亡くなる子もいる。家族へのケアは。

 「一度も泣かずに亡くなる子もいれば、順調に経過をたどっていた子が急変したり、退院して数日後に亡くなったりすることもある。病院にいる間は家族の話を聞くなど支援ができるが、退院した後まではケアが行き届かない。赤ちゃんを亡くした母親に病院に検診に来てもらうときには、他に赤ちゃんや妊婦さんがいる通常の外来日とは別日に来てもらうなどして、できるだけ配慮している」

 ―沖縄で低体重児が多い要因として、考えられることは。

 「低体重児の要因はさまざまだが、母親の体が未熟だと、妊娠37週より前に出産する早産になり、低体重児が生まれる可能性は高くなる。沖縄は若年出産の割合が全国よりも高く、現場の肌感覚でも、早産で低体重児が生まれた10代の母親は常に一定数いる。低体重で生まれるのは、家族や赤ちゃんにとって負担が大きい。母親の望まない状況での若年出産を防ぐなど、低体重児や早産につながる可能性のある要因自体をなくす取り組みについても目を向けていかなければならない」

(聞き手・嶋岡すみれ)