沖縄で水素を「地産地消」する方法とは 離島から脱炭素社会へ 水素活用に向けて県が調査


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 2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする政府の目標設定を受け、県は離島での水素社会の実現に向けた調査事業を本年度から実施している。島ごとに需要や輸送手段などが異なることを踏まえて水素の調達方法を検討するほか、離島での直接製造を含めたサプライチェーン(供給網)の構築を検討する中で、県産サトウキビ由来のバイオエタノールから水素を「地産」し、島内で消費する手法も視野に入れている。

 既存の火力発電所での混焼や車両用の水素ステーション設置の実現性など、離島における水素需要の創出についても研究していく。県は調査報告を受け、2023年度以降に特定の離島で水素の利活用に向けた実証実験を検討する。

 水素は水や石油、天然ガスなどさまざまな資源から製造ができ、燃焼しても二酸化炭素(CO2)を排出しない次世代エネルギーとして注目されている。

 水素の活用が進めば、電力の9割が化石燃料に由来している沖縄のCO2排出量の削減や、為替相場や海外事情に左右されないエネルギーの安定供給が期待できる。

 調査事業は沖縄電力と子会社の沖縄エネテック、りゅうせきの3社が共同事業体として受託している。委託費は2388万円。

 水素社会の実現に向けた企業や行政の取り組みが、県内でも少しずつ始まっている。

 沖電は水素活用に向けた調査を独自に実施しているほか、うるま市はりゅうせき・沖縄トヨタ自動車・昭和化学工業と連携してモビリティー面での利活用を目指している。

 県産業政策課の担当者は「現状は離島における水素の需要は乏しい上、導入には技術的な課題も多い。将来的な利活用に向けた可能性や課題の調査となる。沖縄は今後も安定的な化石燃料が主流となるが、再生可能エネルギーなども拡充してCO2排出量の削減を目指したい」と話した。
 (梅田正覚)