30年に返還のスービック基地、米軍が再び利用へ フィリピン


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フィリピン北部スービック湾の旧造船所に新設された海軍基地=24日

 【スービック共同】米海軍がフィリピン北部スービック湾の基地を返還してから24日で30年となった。基地は国際商業港に生まれ変わったが、中国ににらみを利かせる戦略的要衝として見直され、フィリピン海軍が基地を新設。米軍の利用が本格再開する見通しだ。

 「中国は、ウクライナに侵攻したロシアに対する世界の反応を注視している。許容されるとみれば、台湾を占領するだろう」。スービック港湾公社のパウリノ総裁は23日、共同通信の取材に、返還後30年で海軍力を大幅に増強した中国こそ懸念材料だと強調した。

取材に応じるスービック港湾公社のパウリノ総裁=23日、フィリピン

 フィリピンは米国との防衛協力強化協定に基づき、米軍に使用を認める国内基地を現在の5カ所から倍増する方向で交渉中。このうちスービックは最有力候補。「台湾に最も近い拠点で、南シナ海に面している。対象にならないはずがない」とパウリノ氏は指摘する。

 艦船の補修能力が高く、カールソン米大使も今月、視察したという。米軍は対象基地内に資金を出して施設を整備、フィリピンと共同利用し、中国に対抗する方針だ。

 フィリピン海軍が5月に開いた基地の用地は経営破綻した旧造船所の一部で、米企業が買収した。フィリピン政府高官は、中国側が買収しようとしたが、安全保障面で問題視した米側が介入し、阻止したと明かす。

 水深がある良港のスービックは30年前まで米空母の拠点だった。だがフィリピンは日本と違い、原子力空母の寄港を禁止。パウリノ氏は「現役の米空母は原子力を用いており、もはや空母寄港は不可能だ」と断言した。

 かつての軍港は経済特区と化した。貿易や投資が盛んになり、基地依存経済から脱却。パウリノ氏は「15万人の雇用を生み出した」と胸を張る。

 スービックでは24日、一連の祝賀行事が開かれた。米軍基地の一部だった港湾内の飛行場では民間機のほかフィリピン海軍の訓練用ヘリコプターが展示され、近隣の小学生らが操縦席に招かれて記念撮影。飛行場は民間転用に失敗し、空域監視や訓練などの軍事再利用が進んでいる。

(共同通信)