辺野古本体着工 国、民意無視し強行 県、2日に不服申し出


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表面だけ青色をした土砂を崩し、手前の広場に移動させ敷きならす作業が行われた作業ヤードとみられる地点=29日午後、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ(ヘリから花城太撮影)

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画で、沖縄防衛局は29日午前8時、埋め立て本体工事に着手した。翁長雄志知事による埋め立て承認の取り消しに対し、28日に国土交通相がその効力を止める「執行停止」を決定した上で、着工に踏み切った。中断していた海底ボーリング(掘削)調査の作業も再開した。普天間の返還合意から19年が経過し、県や名護市が移設計画の見直しを求める中での強行的な着工で、移設問題は重大な局面を迎えた。

 埋め立て承認取り消しの執行停止に対し、翁長知事は29日、不服審査を総務省所管の第三者機関「国・地方係争委員会」に申し出ることを国交相に通知し、法的な対抗措置を始めた。
 防衛局は実際の埋め立ての準備段階となる陸上部分の工事を始めた。この日行ったのは資材置き場などに使う作業ヤードの整備。埋め立て地に隣接する米軍キャンプ・シュワブ内に造る。今後はシュワブ内で作業車両が通る仮設道路の整備も進め、その後に海上の護岸工事を予定している。
 作業ヤード整備地では29日、敷地にあった施設を解体したとみられる廃材を重機でならす様子が確認された。掘削調査の再開に伴い、海上では浮具(フロート)や油防止膜(オイルフェンス)を広げる作業もあった。一方、県側は11月2日に国・地方係争処理委員会に審査を申し出る。申請から90日以内に出る審査結果で主張が認められない場合、県は高等裁判所に国を提訴することも検討している。
 対する国は27日、国交相が翁長知事に代わり、承認取り消しを撤回する「代執行」手続きを始めた。国交相の勧告、指示に県が従わない場合、国が県を高裁に訴える。翁長知事は勧告に「応じない」としており、県と政府は新基地建設をめぐり法廷闘争に入る見通しだ。
 本体工事の着手については、埋め立て承認の「留意事項」で、沖縄防衛局は工事の実施設計や環境対策に関する県との事前協議を行うよう定めている。県は28日時点で協議は継続しているとの立場を取るが、防衛局は同日、協議は終結したと一方的に通告した。県は協議途中の工事開始は留意事項に違反するとして、30日にも行政手続法に基づく行政指導を防衛局に行う。
 本体工事着手についてグアムを訪問中の菅義偉官房長官は29日、記者団に「埋め立て承認取り消しに対しては執行停止がなされている。自然な形で工事を再開した」と述べた。