沖縄県がん患者会連合会が解散を検討…自助・共助だけでは限界、役員ら「伴走型支援を」


社会
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医療者や支援者、患者などが参加し、体験談や必要なケアなどが話し合われたがんフォーラム=2017年7月、宮古島市(提供)

 がん患者本位の治療や啓発活動を続けてきた沖縄県がん患者会連合会(田名勉会長)が解散を検討している。仕事や治療などで運営が限界を迎えているためだ。新型コロナウイルスの影響で患者会活動も先細る中、同連合会が解散すれば普及や支援活動の影響も懸念される。役員らは「行政や医療界による伴走型の支援が欲しい」と頭を悩ませている。

 連合会は2010年4月に発足。同年の県がん対策推進条例制定に関わり、その後も県がん診療連携協議会でも意見や情報を発信してきた。

 離島で実施してきた「がんフォーラム」は当事者の交流を促進したほか、治療に必要な移動・滞在費など経済的負担の軽減を行政に訴える活動にもつながってきた。

 田名会長は「活動が浸透してきたので一区切りとしたい」とするが、患者本位の環境整備の課題は残っている。役員によると、県内医療機関には患者サロンなどもあるが、病院側に気兼ねして治療への不満や本音を言えないことも少なくない。行政や医療機関の会合も専門的な内容が多く、患者に寄り添う議論は不十分と感じている。

 がんと診断された当事者や家族にとって、治療や手術の不安、退院後の看護や社会復帰の準備、社会保障の情報収集など向き合うことは多い。

 安里香代子事務局長は支援活動の必要性を強調するが、自助や共助だけでは限界を迎えつつある。田仲康榮副会長は「県がん対策推進条例は制定から時がたち、『仏作って魂入れず』の状態。患者本位という『魂』を入れ直すべき時だ」と訴える。

 解散話が浮上する中でも、安里事務局長には相談の電話が寄せられ、長ければ1時間以上に及ぶこともある。「不安で立ちすくむ患者は共感してくれる相手がいるだけで前を向くことができる。連合会の役割は分かっているけれども…」と小さく語った。

 がん対策などの事業を担う県健康長寿課は、連合会との意思疎通が不足していたとして「早めにコンタクトを取れる場を考えたい」と説明。県としてもがん体験者が相談員となるピアサポート事業を充実していく考えを示した。

(嘉陽拓也)