琉球切手でたどる復帰前の沖縄…消印手掛かりに「世相伝えたい」 収集家の鎌田さん


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琉球切手のコレクションを広げる弁護士の鎌田晋さん=15日、那覇市の真喜屋法律事務所

 復帰前の記憶を追い求めて―。米統治下の沖縄では、沖縄独特の風物や風俗の図柄の琉球切手が多く発行された。切手収集家の集まる琉球郵趣会のメンバーで、那覇市の真喜屋法律事務所の弁護士・鎌田晋さん(54)は、琉球切手に魅せられたマニアの一人だ。中でも好みは、使用済みで消印が押された物。米統治という特殊な状況下で発行され、郵便物として旅をした切手や手紙の収集にいそしむ。「何度見ても飽きない。眺めているだけで復帰前の沖縄の空気を感じ取ることができる。沖縄の世相を映し、価値は無限大だ」と熱っぽく語る。

 琉球郵趣会によると、1948年から日本復帰の72年まで、琉球政府郵政庁が259種の琉球切手を発行した。58年にはB円(軍票)からドルに通貨が変更。米軍の親米離日政策の影響などにより、デザインには琉球文化が色濃く反映されているという。

 青森県出身の鎌田さんと琉球切手の出合いは幼少期。色鮮やかなジュゴンやクマノミといった沖縄の生物のデザインに心を奪われた。学生時代には都内の切手店で念願だった空手の図柄入りを手に入れた。探究心は冷めず、琉球大の法科大学院に進み、弁護士業の傍ら、現在も仕事先などで機会があれば切手や消印の話を持ち出し、世に埋もれた琉球切手を探す。

 中でも特に探し求めているのは、当時の発送済みの郵便物だ。切手やはがきに日付や受付局の消印が押されている物で、宛先や差出人などから、復帰前の時代背景や当時の空気感を読み解くことにつながるという。

 「宛先に書かれた地を訪ねると、全く違う建物が建っていたり、縁のある物が残っていたりと、切手がたどったドラマが映る。アメリカ世から今に至る時代の変遷をうかがい知ることができる」と話す。古物店などでは未使用の琉球切手より、消印が押された物が価値は高く、数十万円の値が付く場合もある。

 日本復帰から半世紀。鎌田さんは琉球切手に押された消印の記録から記憶をたぐる活動を続ける。「復帰から半世紀を経て、切手が持つ記憶も失われつつある。当時の沖縄の世相を感じ取れる物を残し、復帰を知らない若い世代に引き継いでいきたい」と意義を語る。今年も残すところあとわずか。年末の大掃除の際にタンスや書庫を覗けば、眠っている「お宝」に出合えるかもしれない。使用済みの琉球切手などの情報は琉球郵趣会、メールはryukyuyushu@yahoo.co.jp
 (高辻浩之)