石垣市長、反撃能力を容認 平時港湾使用「協力する」 事前に住民説明必要


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南西諸島の防衛力強化に関する考え方を語る中山義隆石垣市長=1月25日、石垣市役所

 政府が南西諸島の防衛力強化を進める方針を示す中、「有事」発生の可能性が指摘される台湾に近く、3月に陸上自衛隊駐屯地の開設が予定される石垣市。中山義隆市長は琉球新報のインタビューに対し、反撃能力(敵基地攻撃能力)を行使できる装備が市内に配備される可能性があることについて「仮に配備となっても大きな懸念はなく、基本的には容認だ」と明言した。事前に住民に対する説明が必要だとの認識も示した。自衛隊による港湾や空港の使用については「わが国を守ってくれる自衛隊が使用したい場合にはできる限り協力したい」と述べた。

 ―八重山を取り巻く安全保障環境の認識は。
 「中国が軍事力を広範に急速に拡大し、尖閣諸島周辺の領海侵入など力による一方的な現状変更も進めている。台湾周辺での軍事活動活発化などを見ると厳しい状況だ」 ―駐屯地開設の意義は。
 「非常に厳しい安全保障環境の中、抑止力の向上に寄与すると考える」

 ―南西諸島の防衛力強化の方針については。
 「わが国への武力行使を未然に防ぐために必要だろう。どの地域でどの程度強化するかは国が考えることなので原則として異論はない。ただ、地元の負担も増すので事前説明はあるべきだ」

 ―反撃能力(敵基地攻撃能力)を行使できる装備が石垣島に配備される可能性がある。
 「憲法、国際法の範囲内で武力行使3要件を満たして初めて行使するという話で、あくまでも専守防衛にこだわっていると認識している。仮に配備となっても大きな懸念はなく、基本的には容認だ。ただ事前の住民説明は必要だ」

 ―自衛隊などによる平時からの港湾・空港の使用促進も示された。
 「わが国を守ってくれている自衛隊が使用したいという場合にはできる限り協力したい。その意味では、平時の使用促進ということについて特に異論はない」「(防衛力強化に絡んで先島の)空港や港湾の整備に力を入れるとの報道もある。以前から市は空港の滑走路延長を求めてきた。遠距離にある海外との航空路線開設やチャーター便の呼び込みに必要だからだ。仮に国から延伸の話があった場合は前向きに検討したい」 

 ―物流などへの影響についての懸念もある。
 「訓練などでの自衛隊の使用で特に混乱は起きていない。大型クルーズ船バースも整備されていることなどを踏まえると柔軟に対応できると考えている。準母港のような形で使うならばそこに合わせた港湾整備を国が考えると思う。特に心配はしていない」

 ―米軍使用について。
 「米軍は日米安保体制の中でどこでも使用できるので、異は唱えない。どのような利用かは事前に通知が来ると思うので、市民生活などに多大な影響を及ぼしそうならば改善や変更を求める」 ―石垣島での自衛隊と米軍との共同訓練の可能性も考えられる。
 「可能性としてはあると思うが、当然、事前通知があるだろう。その中で懸念や要望があればしっかり伝えたい」

 ―国民保護の実効性確保に向けた取り組みは。
 「直近で懸念されるのは台湾有事が発生し、台湾から避難民が来るという状況だ。市民を島外に避難させなければいけないかもしれない。シミュレーションをとにかく早く、できるだけ回数を重ねて練度を高めたい」
 (聞き手 大嶺雅俊)