学生たちの団結 分断統治乗り越える力に 知念ウシ(むぬかちゃー)<女性たち発・うちなー語らな>


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知念ウシ(むぬかちゃー)

 ある大学で後期に急きょ1年生のゼミを担当することになり、沖縄島北部で先頃、期末合宿を実施した。

 帰り道のことだ。10時にバスで出発し、名護のそば屋に着いたのが10時半。昼食には早い。学生たちが一斉に渋い顔をした。学生は授業中に思いを表情に出すことはほとんどない。管理教育へのサバイバル術だろう。なので、この反応には驚いた。そこで、ナングシク(名護城)にさくら祭りを見に行った。ここからスバヤーに戻ると正午。日曜の昼時、私たちの十分な席があるかと思案していると、学生たちがやってきた。「昼食はソバでなくてもいい」「大学に到着後自由に」「メニューが選べる許田の道の駅に」「途中のサービスエリアはどうか」などなど。運転手さんからは、バス用駐車場の存在、駐車場と店の距離の近さが要望された。

 ナングシクから動き出したバスの中、私は学生たちに向かってマイクを持ち、「いろいろ要望があるので、恩納の駅はどうか」と言った。学生たちは深くうなずき、満足げな声を上げた。私は団結する力の威力を感じた。昼食場所の変更、メニューの自由選択という要求で一致した彼らの前に立ち、実は、圧を感じ、ちょっと怖かったのだ。

 私がやってきたのは「分断統治」だったのか。前期はリモート授業が多く、懇親のための機会もなく、学生たちはバラバラなままだった。後期もグループワークは多少取り入れたが、週に1度の90分では互いにつながれない。そういう彼らに対して、私が方針を決めて引っ張ってきた。意図はなかったが、これはDivide(分断) & Rule(統治)?

 学生たちはメンバー全員と「合宿で初めて口をきけた」と喜んでいた。「このゼミ当たりですよ。皆いい人で。良かった」とも言っていた。彼らは人とつながることを求め、そうなったら自信満々に自己主張した。

 もう一つ、ドゥーブミー(手前みそ)だが、合宿でやったことも関係あるだろう。自分の将来の夢と「沖縄の未来への夢」、それらを実現するための自分のスクブン(使命)を考え合体させ、大きな紙にドリームマップを描くのだ。学生同士相談しながらも、それぞれが自身の夢の地図を作り完成後は皆で見て、感想のコメントを書き、エールを交換した。

 地域貢献、ボランティア活動を志望する学生も多かった。「最近の若者は社会問題に関心がない」というが、全く逆だ。「基地問題に無関心」なわけでもない。日本政府と、「要請―無視」の関係を繰り返す大人たちの閉塞(へいそく)状況に対して、若い世代として、次を模索しているのだろう。

 今回改めて実感したのは、自分を見つめ、仲間と認め合い、自己肯定や自信を育み、団結すると、力を発揮するということだった。