平和な社会は「思いやり」から 内戦続いたコロンビアから教員が沖縄研修 中学校の授業を見学


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道徳の教科書を手に授業を見学するコロンビアの研修員=1月30日、豊見城市の伊良波中学校

 内戦が50年以上続き、和平合意後も不安定な情勢にあるコロンビア。現地の教員や教育省関係者らが来沖し、1月から県内で平和について学んでいる。沖縄戦の悲惨な実相や文化に根付く平和への思いなどに触れ、内戦を繰り返さないことを目指して、沖縄の教育現場で培われてきた平和人権教育をコロンビアへ持ち帰るという。来沖するのは今回が2回目。

 コロンビアでは50年以上、政府と武装組織による内戦が続き、2016年に和平合意が成立した。和平合意に伴い19年から、国際協力機構(JICA)の支援を受けて平和教育の取り組みも始まった。一方で、一部の武装組織は活動を続けており、現在も殺人や誘拐など事件が起きている。

 来沖したコロンビアの関係者は1月30日に豊見城市立伊良波中学校を訪問し、平和な社会の基盤となる「思いやり」に関する授業を見学し、教員と交流した。

 道徳の授業を担当した教員の金城沙矢花さんは「思いやりのある行動を取ることで周囲が明るく、仲良くなる。クラス、社会と広げることが世界の平和にもつながる」とまとめた。授業内ではお年寄りに席を譲る場面を想像し「どう声を掛けるか」など、グループワークを通して思いやりのある行動の理解を促した。

 見学したアギーレラミレス・マリベルさんは「考えるだけでなく実践することで子どもの理解が深まる」と気付きを得た。アギーレラミレスさんはコロンビア北西部のアンティオキア県で教員をしている。同県の郊外部には現在も武装組織が残り、殺人・誘拐・麻薬の売買などもあるという。「都市部も安心できない。校内で麻薬のやりとりなどもある」と現状を話した。「思いやりは平和な社会を形成する基本である。最も大事なことだと思った」と振り返った。

 授業後は教員との交流を行った。内山直美教頭は「沖縄戦の体験者が減少し、次の平和教育を模索している。小さなことから平和につなげられる」との思いで道徳を紹介した。ガリンドロサノ・ナスリさんは「生徒の行動に変容は見受けられたか」と質問した。金城さんは「話し合いでトラブルを解決する時、生徒の発言が(思いやりある言い方に)変わることがある」と日常の変化を伝えた。
 (金盛文香)