長年眠っていたピアノ、対馬丸記念館へ 児童「平和、歌い続ける」 沖縄


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大浜哲子さん(中央)と、つしま丸児童合唱団などの子どもたち=11日、那覇市若狭の同館

 遺品のピアノ、再び鳴り響く―。元小学校教諭の大浜哲子さん(90)が自宅で眠っていたピアノを対馬丸記念館に贈った。大浜さんの亡くなったおいがこのピアノを弾いていた。11日、那覇市若狭の記念館で開かれた感謝式では、大浜さんが贈ったピアノの伴奏で、つしま丸児童合唱団が歌声を披露した。児童らの歌声と共によみがえったピアノの音色に大浜さんは「ありがとう」と涙ぐみ、子どもたちに感謝した。

 大浜さんは約50年前、おいの新本寛さん、めいのためにピアノを購入した。新本さんはこのピアノで練習を重ねて音楽教師になった。那覇高などで吹奏楽の指導者としても活動していたが、病を患い、2010年に52歳の若さで亡くなった。

 新本さんが独立した後、ピアノは弾かれることもなく、那覇市繁多川の大浜さん宅で眠っていた。だが「家で遊ばせておくのはもったいない」と自ら寄贈先を探し、これまで使っていたピアノに不具合が生じていた記念館に贈ることを決めた。

 大浜さんは合唱団の姿に、故郷の石垣市平得で敗戦を迎えた77年前の自身を重ねた様子。「こんなに素晴らしい子どもたちが対馬丸記念館にいることを知ってうれしくなった。このピアノと仲良くしてくれるとありがたい」と一人一人の手を握りしめた。

 合唱団員の一人、那覇市立垣花小5年の児童(11)は「前のピアノより音がきれいで歌いやすい。このピアノで平和の歌を歌い続けていきたい」と感謝し「休憩や練習を終えた後、ピアノに触るのが楽しみ」と声を弾ませた。
 (安里周悟)