気持ちを代弁するということ 廣瀬真喜子(沖縄女子短期大学・児童教育学科教授)<未来へいっぽにほ>


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 4月、沖縄女子短期大学も新年度を迎えた。新しい部署で慣れない環境の中、少しの緊張を抱えながら、自分の居場所を増やす作業の毎日。この時期になると、思い出すことがある。

 初めて保育園に子どもを預けた時のことだ。一番の困りごとは、登園時に子どもが号泣すること。「子どもを置き去りにする悪いお母さん」だと私を責めるように泣き叫ぶわが子を、先生は笑顔で抱っこしながら「お母さん、大丈夫ですよ。行ってらっしゃい」と言う。娘には「お母さんと会えなくなるのは寂しいけれど、遊んで帰りを待ってましょうね」と声かけをした。まだ保育の知識がなかった当時の私は、「寂しいなんて言ったら、余計に泣くではないか。せめて寂しくないよと話してくれたらいいのに」と何度も思ったものだ。

 保育では、子どもが自らの感情を知ることができるように、教えることが大切だ。保育者が気持ちを代弁することで、子どもは気持ちを分かってもらえたと安心し、次のステップに進むことができる。しっかり気持ちを受け止めてもらえた子は、自分の居場所を見つけて過ごすことができるようになる。

 これって、大人も同じだ。先日、母から電話があった。「あなたが今、仕事や子育てで頑張っているのは分かっているよ。だから身体には気を付けてね」。涙が出た。頑張っていることを分かってくれる人がいる。本来なら私の方こそ、母に対して「身体を大切にね」と言わなければいけないのに。自分の気持ちを代弁してくれる他者の存在は、子どもにとっても大人にとっても、ありがたい。それができる人に、私もなりたい。