「戦世ぬ哀り」手記に 具志堅、大城さん姉妹


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沖縄戦の手記を出版し、稲嶺進市長(中央)に手渡した具志堅和子さん(左)と大城愛子さん(右)=11月26日、名護市役所

 【名護】名護市の具志堅和子さん(88)と妹の大城愛子さん(86)が、自身の沖縄戦の証言をまとめた手記「忘りてぃやならん 戦世ぬ哀り―和子・愛子の沖縄戦記―」を出版した。11月26日に名護市役所に稲嶺進市長を訪ね、本を寄贈した。激戦地の本島南部を生き延びてきた2人。愛子さんは「生きているうちに伝えたい」と話した。

 沖縄戦当時、那覇に住んでいた和子さんと愛子さんは壕や墓に身をしのばせながら、親族12人で南部方面へ逃げた。しかし、南に進むにつれて戦闘が激しくなり、喜屋武岬にたどり着いたときは和子さんと愛子さんの2人だけが残されていた。
 2人は糸満市米須で生き別れた父の姿が忘れられないという。愛子さんは「『和子、愛子元気でよ―』と言った父のことを思い出すと、涙が出る」と話した。「死体を見るたびに、次は自分たちと思った。生き延びたのが奇跡だ」と振り返った。
 今回手記を企画した愛子さんの長男の大城松健さんは「戦後70年の節目で、声なき声を形に残すべきだろうと決めた」と話した。和子さんは出版を「ありがたい」と感謝した。
 稲嶺市長は「戦争のことを知っている人は少ししかいない。文章として残しておくことは大事。生きた証ですね」と2人に語り掛けた。
 本は市内の図書館や学校で配布する。購入などの問い合わせは大城松健さん(電話)090(3790)7603。